顧客が楽しみにしていた旅行や、人生最高の晴れの日に、最悪の仕打ちをした「てるみくらぶ」や「はれのひ」。直前まで無理な経営をゴリ押しした結果、顧客の大切なイベントを「勝手にリセット」するという暴挙に出た。しかし、この「勝手にリセット状態」を生み出す困った人は、どこの組織にもいる。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口 博)
破綻を予見しながらも営業を続行
消費者に多大な損失を与えた
はれのひの破産手続開始が決定された。昨年倒産した、てるみくらぶのケースと酷似しているのは、いずれも破綻によって消費者が楽しみにしていたイベントが「勝手にリセット」されたことだ。
てるみくらぶは、前々から準備して心待ちにしていただろう旅行というイベントに対して、その場や直前になって支払いがされていないことが発覚し、旅行を開始したり継続したりすることができないという事態を発生させた。
はれのひは、家庭によっては女児が生まれたときからこの日を思い描き、楽しみにしていただろう成人式の、よりによって当日になって晴れ着や着付けが準備できないという事態を引き起こし、最高の晴れがましい日に、最悪の仕打ちをもたらした。
企業経営をしていれば、経営難に直面することもあるだろう。問題は、経営難に直面した際の処し方だ。てるみくらぶは、旅行というイベントの実現をサポートすることが使命なのだから、旅行の実現がかなえられない事態が見込めたら、営業を控える判断をすべきだった。にもかかわらず、最後まで営業し、顧客から入金させる一方で、航空会社やホテルへ支払いをしないという行為には、使命感のひとかけらも感じられない。
はれのひは、まさに晴れの日に晴れ着や着付けなどのサービス提供をすることが使命であるにもかかわらず、サービス提供ができないことが半年以上前からわかっていたのに、成人式直前まで営業。顧客から入金させる一方で、当日になって晴れ着や着付けが提供できないという、これまた使命とは真逆のトンデモない行為に及んだのだ。
私は、こうした行為を、顧客や取引先に対する使命を無視した「勝手にリセット」状態と呼んでいる。勝手にリセットされてしまっては、顧客や取引先はたまったものではない。せめて、ある程度の猶予期間をもって営業停止をしたり状況の開示をしたりしていれば、顧客の判断で、別の会社に旅行や晴れ着の手配ができる可能性があったかもしれない。