どうすれば外国語を10年、20年と記憶に残すことができるのか?あの中野信子氏が絶賛した話題の新刊『脳が認める外国語勉強法』には、ヒトの記憶の特性を最大限活用し、一度覚えたら単語も文法も忘れなくなる方法を紹介している。特別に一部を無料で公開する。

「思いだすタイミング」で記憶力が変わる

最強の記憶術は「○○を空けて思いだす」

 仮に、何かを覚えていられる時間を正確に予測することができれば、頭のなかにある情報を自由自在に操れるようになる。車のキーをどこに置いたか忘れる直前に、忘れそうだと警告されれば、絶対に忘れ物をしない夢のような素敵な人生を送れるだろう。

 だが残念ながら、私たちの記憶は非常に厄介だ。ある特定の記憶をいつ忘れるか、正確に予測することは不可能なのだ。記憶は私たちの予期しない体験や想像とのつながりまで作ってしまう。

 過去の記憶の断片を失うかたわら、現在の断片が新たに組み込まれる。車や鍵といった単語はもちろん、「鍵」と韻を踏むだけの言葉に触れてしまうと、カギに関する記憶が強まったり弱まったりしかねず、いつ忘れるかの予測が外れる。

 似た響きの別の単語に出合うだけで、数カ月後にはすべてが台無しになる。ある1つの単語を何回思いだしたか数えるのは無理なのだ。

 しかし、「まとまり」としての記憶についてなら、予測は可能になる。たとえば大学生のグループを対象に、「雪上ゴルフを考案した人物(注1)」といった世間であまり知られていない雑学的知識を教えたとしよう。そして1回だけ思いだす練習をさせたうえで、6カ月後に思いだせるかどうかのテストをする。そうすると、練習をいつするかによって、図表1のように結果が大きく変わる。

最強の記憶術は「○○を空けて思いだす」図表1 4週間程度の間隔がベスト
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注1 雪上ゴルフを考案したのは小説家のラドヤード・キプリング。春まで趣味のゴルフがお預けになるのが我慢できなかったのだ。バーモント州の片田舎で『ジャングルブック』(ラドヤード・キップリング著、三辺律子訳、岩波書店、2015)を執筆するかたわら、ゴルフボールを赤く塗り、雪の上に空き缶を置いてゴルフを楽しんだ。