どうすれば外国語を10年、20年と記憶に残すことができるのか?あの中野信子氏が絶賛した話題の新刊『脳が認める外国語勉強法』には、ヒトの記憶の特性を最大限活用し、一度覚えたら単語も文法も忘れなくなる方法を紹介している。特別に一部を無料で公開する。
ヒトは「暗記」に向いていない
学校や職場では、誰もが何かしら暗記させられた経験があるだろう。しかし、覚え方を教えてくれる人はめったにいない。それには理由がないわけではない。そもそも、「暗記」という行為は存在しない。考える、繰り返す、思いだす、想像する、といったことはできるが、私たちは暗記するようにはできていないのだ。
人の脳は考えるようにできていて、大事なことは自動的に保持される。近所で遭遇した人懐っこいトラから走って逃げているあいだ、「このことを覚えておかなければ!トラは危険だ。忘れるな。トラは危険だ!」とは考えない。逃げてさえいれば、脳がそのことを覚えておいてくれる。
暗記に最も近い思考活動は思いだす練習だ(「あの男性の名前は何だったかな?」など)。そこで、うまく思いだせたときに得られる感情について具体的に見ていくとしよう。
今まで見てきた英単語を思いだしてみてほしい。たぶん、思いだす努力を続けても、脳内に立ち込める霧に阻まれて浮かんでこない単語がきっとある。
時間を空けてさらに思いだせるかどうか試すと、興味深い結果が表れる。翌週になればきっと、あっさり思いだせた単語は忘れている。思いだすのに少し時間がかかった単語を覚えている確率のほうが20%ほど高い。
そして、思いだすのに苦労した単語(思いだそうとしたときにほとんど思いだせなかった単語)は、意識に深く刻まれている。だから、時間がたったあとでも75%の確率で思いだせる。しかも、「喉まで出かかっている」ともがく瞬間があった場合は、思いだす確率が倍になる。