しかし、このような事件は今回が初めてではない。2009年、群馬県渋川市の老人ホーム「たまゆら」の火災で入所していた高齢者10名が死亡した。「たまゆら」は、東京都の生活保護の高齢者を多数受け入れていた。2015年5月には、神奈川県川崎市で簡易宿泊所2棟が全焼し、11名が死亡した。2017年5月には北九州市の木造アパート火災で居住者6名が死亡、8月には秋田県横手町のアパート火災で居住者5名が死亡した。

 火災が起きた建物の位置付けは、入所施設・宿泊施設・住宅と様々だが、共通しているのは生活保護で暮らす高齢者など、他に行き場のない人々を受け入れる「最後の砦」となっていることだ。

 この問題は政府も認識しており、生活困窮者支援や生活保護に関連する審議会・委員会などで何回も議論されている。2015年7月、生活保護の家賃補助が見直された折も、「貧困ビジネス」対策として劣悪な住居が提供されている場合には家賃補助を減額することとなった。

 生活保護運用で行われている改善の努力は、今、どのような成果を生んでいるのだろうか。関東で生活保護業務に関わる若手ケースワーカー2名と関西で働くベテランケースワーカーの3人に話を聴いた。

劣悪な住居への“経済制裁”は
生活保護の「住」をどう変えたか?

 まず、2015年7月以来の生活保護運用における劣悪な住居の提供者に対する“経済制裁”は、現場にどのような影響を与えているだろうか。

 東京都内の若手ケースワーカー・Aさんは、無料低額宿泊所・簡易旅館などの「かりそめ」の住の利用は、極力短期間に限定されるべき原則があるのに、長期化するケースが多いことを憂慮しつつ語る。

「2015年以後の変化、川崎市の火災後の変化を強いて言えば、防火設備や避難経路の提示などが具わっている施設かどうかを、訪問した際にきちんと確認するようになったことでしょうか」