2018年1月から「つみたてNISA」がいよいよ始まりました。新春から心機一転、長期の資産形成を計画しているオヤジたちも多いのではないでしょうか。特に、初心者のオヤジたちがこの制度の創設をきっかけに長期の資産形成への取り組みをスタートしたのであれば、それは金融庁の制度創設の狙い通りであり、それを応援する私としてもとても嬉しく思います。一方、昨年の秋以降、日本の株式市場は盛り上がりを見せており、20数年来の高値を更新しました。そのような環境の中、今年から「つみたてNISA」で投資を始めてみようと意気込んでいる投資初心者の中には、「日本経済、日本の代表的企業のことは情報として入ってくるし、馴染みもあるから、まずは日本株式に投資してみようかな」と考える人も多いと思います。でもそれは本当に正しい投資判断なのでしょうか? 今回はこの点について、深掘りしていきたいと思います。

本来は日本株式をどの程度持つべきなのか

 1990年にノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・シャープ教授が提唱した資本資産価格モデル(CAPM)によれば、最も効率的な投資方法は“市場ポートフォリオ”を保有することになります。市場ポートフォリオとは各資産、各国などを市場の時価総額の構成比率で保有することを意味します。現在、グローバル株式市場における日本株式市場の時価総額の構成比率は9%程度です(MSCI World指数に基づく、2017年10月末時点)。したがって、理論的には株式の中で日本株式に9%程度を配分するのが一つの基準となります。

合理的行動の邪魔をする人間のバイアス

 とは言っても、株式の中で日本株式が9%程度、逆に言うと海外株式が91%と言われて、「はい、そうですか」と素直に受け入れられる人はそう多くはないでしょう。「海外企業のことなんてよくわからないから投資なんてできない」「日本企業のことなら情報は入ってくるし、理解できるから日本株式を持つべきだ」との反論が聞こえてきそうです。確かに、経験豊富なビジネスマンであるオヤジの皆様は、日本の代表的企業が“今”どのようなビジネスをやっているのか、代表的な商品は何なのか、業績はどうなのか、といった情報を知っているかもしれません。でも、この情報は株式投資においてどの程度大事な情報なのでしょうか? 残念ながら、この程度の情報では“知らない”とほぼ同じ状況と言えるでしょう。なぜならば、株式市場はこれから先の期待で動きますので、“今”ではなく“将来”の情報が重要なのです。ある日本企業の将来のビジネス・モデルがどうなるのか、将来の財務内容はどうなるのか、そしてその企業が世界の中でどのような位置づけになるのかなど、ここまで理解している人はいるでしょうか? このレベルまで分析を実施している人は、その日本企業のことをよく知っていると言えますから、分析の結果として魅力があると判断し、それにより多くの資金を配分することは間違っていません。でも、プロの投資家ではない個人の方々がここまで実施するのは無理でしょう。だとすると、皆さんはやはり日本企業については“知らない”のと同じであり、海外企業について知らないからという理由で回避することは合理的ではないのです。