結果を出すマネジャーが必ずやっていること

 当時のプルデンシャル生命の社長、坂口陽史さんもその1人でした。

 この人が先頭に立っていたからこそ、プルデンシャルは日本でトップレベルの生命保険会社になれた。私は心からそう思っているのですが、そんな彼も、強いリーダーシップで、すべてを自分の思い通りに動かす、ということは決してしませんでした。

 代わりにやったことは、一方的に部下を信頼することでした。どんどん任せていく。そして、一度任せたら疑わない。

 これは坂口さん自身が、高校を卒業後、単身アメリカに渡り、いろいろな苦労を乗り越えて、一歩一歩、前に進んで成功していった、ということが大きかったと思います。いろいろな人に信頼してもらい、自身が成長できた。信頼されることの大切さを知っていたのだと思います。

 また、苦労して自身が弱い立場にいたからこそ、うまくいかなくなったりして辛い思いをしている人の気持ちがわかった。人はどうすればやる気が出るのか、ということも理解していたのです。

 苦労なく、いきなり上に引っ張り上げられてトップに据えられたりしたら、こういうことはわからない。部下は自分の駒だ、オレの思い通りに動けばいいんだ、くらいに思ってしまいがちです。

 しかし、坂口さんは違ったのです。信頼し、期待すると、人間は必ず応えてくれる。だから、部下に全幅の信頼を置いて任せた。すると、部下がそれに応えてくれる。

 もし逆に、部下を疑うと、どうなるか。

 上司も部下から疑われます。

 こうした本質を、坂口さんは自身の経験からつかんでいたのだと思います。

 目指すべきは、「強いマネジャー」ではなく「応援されるマネジャー」です。

 強いだけのマネジャーになっても意味がない。それは、単に強がっているだけだから。

 実は周囲からは、そう見えるのです。小型犬がよく吠えるのと同じです。本当は弱いから強がっているだけ。本当に強い人は、そんなことはしない。強く見せる必要など、ないのです。