ストレスが人を強くする!

 代々、ヨガ行者たちの修行場所はヒマラヤ山中です。

 時代的にも、道場やスタジオなどはありませんでした。

 ヒマラヤ山中は昼と夜の寒暖差が激しい環境ですが、ヨガ行者たちはほとんど裸同然でヨガを行っていました。しかも、明日の食料にありつけるかどうかもわかりません。

 酸素も薄く、一般の方がそこでヨガをすれば、頭痛の症状が出て来てヨガどころではなくなるでしょう。つまり、本来の伝統的なヨガは、こうしたストレス環境下で育まれてきたものであり、それはスタジオ内で形として同じことを行ったとしても得られる効果は異なるのです。

 「暑い、寒い…、お腹が減った…、喉が渇いた…、はたまた生きるか死ぬか…」という状況下で「今」に集中するのと、スタジオ内で「今」に集中するのとでは、格段にストレスレベルが異なるのです。

 ストレスの形は違えども、ビジネスや競技の現場もヒマラヤ山中と同じストレス環境なのです。つまり、ストレス環境に適応するには、ストレスをかけた状態でのメンタルトレーニングが必要なのです。

 生涯負けなしだったとされるかの宮本武蔵は、13歳ではじめての斬り合いを経験してから29歳に至るまで60余度の実戦を繰り返してきたと『五輪書』に書いています。

 これほどまでに実戦経験のある武道家は、あとにも先にも武蔵以外にはいないでしょう。

 それは、武蔵が自身の精神を最高レベルにまで高めるには、道場稽古だけでは足りず、実戦というストレス環境下でしか到達できないということを人一倍認識していたからだと考えられます。

2種類のストレスで肉体と精神を強くする

 それでは、一体どのようなストレスをかければ、肉体と精神は強くなるのでしょうか?

 この本のテーマである「最強のメンタル」とは、いかなる状況下でも一定のパフォーマンスを出し続けることができるメンタルのことです。

 それは、自分の持てる能力を、(1)限られた時間(2)タフな環境の中で最大限に引き出す能力のことです。

 (1)は俗に頑張る系ストレスと呼ばれ、(2)は我慢系ストレスと呼ばれたりします。

 次回以降の連載で、この2つのストレスについて、解説していきたいと思います。