交渉相手はシェアする相手と考える
交渉や説得の目的とは、言うまでもなく自分が望む答えや利益を得るためです。
商談を成立させたい。結婚を許してもらいたい。会社に就職したい。人は自分を取り巻く利得のために動くわけです。
では、自分の利得を高めるために、人はどのように動けばいいのでしょうか。
簡単にいうと「幸せは相手とシェアするもの」と考えて、相手とつきあうことではないでしょうか。
全てを勝ち取ろうとするのではなく、相手と勝利を分かち合う。「win-win」の関係などと言われますが、互いの幸せを頭に置くことで、より大きな成果を手に入れるのです。
たとえば、氷河期を生きていた人類は、集団でマンモス狩りをして暮らしていました。
もし誰かが独り占めを狙ったら、自分よりも大きな獲物を倒すことはできなかったでしょう。生き残るという観点から考えると、協力し合って、互いに幸せになるのが一番効率がよかったということですね。
言いたいことを言わせるだけで合意に至る場合も
「相手が言いたいことをまだ持っている限り、こちらが何を言っても無駄だ」
D・カーネギーは『人を動かす』という本のなかでそう言っていますが、まずは相手に意見を言わせることが大切です。
ちょっとしたお願いごとならまだしも、難しい説得やもめ事を解決するための交渉では、まず相手の話を聞くことが重要です。
もし相手が話の内容に不安や不満を持っているなら、「もう少し、そこをお聞かせいただけませんか」と、まずは話をすべて引き出してしまいましょう。すると、相手の合意まで引き出せてしまうことがあります。
相手の心にスイッチを入れる言葉がけ
松下幸之助さんは「従いつつ導く」ということを著書のなかで言っています。
たとえば、会社で部下に頼みごとをするとき「こういうことをしようと思うが、君はどう思うか」「やってくれるか」とまずは尋ねてみる。
もともと人間は「自分の考えで事を行うときにいちばん喜びが感じられるもの」であり、その人自身のアイデアが加わることで、より良い結果を生み出すことがあります。
そこで松下幸之助さんは、注意をしなければならないようなときでも、相手の意欲に水をささないような言い方を心がけてきたと言います。
「何かを頼んだり、何かをやってもらうとき、決してやる気を失わせないよう、相手の自主性に従いつつ導いていく、むずかしいことですが、これが大切なことではないでしょうか」
と松下幸之助さんは言っています。
その一言で、相手のやる気を奪わない。いま話し合っていることを前に進めていく気持に水をかけない。そんな言葉の使い方が、相手の心にスイッチを入れるのです。