交渉は一回ダメと言われてもあきらめない

 相手の感情スイッチが入り、うまく交渉できたとしても、もちろん断られてしまう場合もあります。一回断られたら「もうダメだ」とあきらめてしまう人がいますが、実にもったいないことですね。

 簡単なことならまだしも、こみいったお願いや商談・交渉の場合は、一回でOKが出ることのほうが珍しいものです。

 むしろ、すんなり意見が通ったら「どこかで、どんでん返しがあるのではないか」と用心しておいたほうがいいでしょう。

 もともと人は説得されることを嫌います。特に相手がよく知らない相手なら、なおさら。それをこの一回で決めなければダメだとがっついて、相手を不快にさせてしまうと、まとまる話もまとまりません。

 やるかどうかは、どこまでいっても相手が決めること。

 そんなことを気にするよりも、相手が決断しやすい環境をいかにつくっていくかが大切です。 

相手に決断の下駄を預けることで信頼度を高める

 たとえば、決断を迫るのではなく、相手に下駄を預けてしまうのです。

 「そう簡単にOKをもらえるとは思っていません」

 「いろいろお考えもあることでしょうから、いま決めていただかなくてもけっこうです」

 あくまであなたの意思を尊重しますというメッセージを出すことで、説得する側への好感度を高めるのです。相手もこちらの働きかけを尊重し、断りづらくなります。

 もし断られた場合にも「忙しいところ貴重なお時間ありがとうございました」と、気にもとめず明るく振る舞いましょう。

 すると、相手には負い目ができて「今度、何か話があればやってみよう」と考える可能性が高くなります。

 時間をおいてアプローチすれば、「やっぱりやってみよう」と判断が翻ることもあります。これが心理学でいう仮眠効果です。

 私たちの判断は、相手の印象によっても左右されます。

 しかし、少し時間をおくと「印象」と「情報」が切り離されます。そんなとき、再びその情報が呼び覚まされると、単純にその物事の善し悪しで判断されるようになり、結果として「やっぱりやってみよう」と判断が翻ることもあるわけです。