以上で、私の主張は一周したことになる。社員たちを、みずからの意思で判断する人間、言い換えれば、企業は社会機関であると信じているからこそ高いパフォーマンスを目指す真のプロフェッショナルとして扱い、一貫性や共通のアイデンティティを生み出すために、目的や価値観によって動機づけることが重要である。要するに、第1の原則「共通の目的」が第6の原則「自己組織化」を可能にせしめるのだ。

 以上で説明した6原則は相互に関連しており、共通する特徴も多い。とりわけ世界的なグレート・カンパニーにとって、制度の論理を構築することは、活動の具体的成果というよりも、言わば「整合的(コヒーレント)で全体的(ホリスティック)な追求」である。そこでは、各要素が相互に強化し合い、密接に結合し、企業全体に浸透した論理やリーダーシップが反映される。

 もちろん、眉に唾する人も多い。社会貢献に関心がある組織として自社をアピールする企業は、他社以上に厳しい監視の目にさらされるうえ、財務的にも社会的にも掲げた目標と実際の行動のギャップに関する批判に耐えなければならない。社会に恩恵を施しても金を儲ければ、ごまかしによるものではないかと批判される。よい行いをしても複雑な問題を解決できなければ、勇気や責任感が不足していると批判される。

 事業と社会の双方に価値をもたらすことで、ウイン・ウインのチャンスを見出すという新しい類の資本主義は、その支持を広げているとはいえ、事業に課された義務をめぐっては、いまだに論争がある。

 世界的なグレート・カンパニーは、新たな万能理論や完璧な解答が出てくるのを待ったりしない。そのような企業のリーダーは、方向性を打ち出し、成長を実現するために、社会の論理や制度の論理によって経済の論理や財務の論理を補完する。制度の論理は、費用対効果の計算で説明したり、経済用語に還元したりすることは難しいが、それでも財務業績を大きく推進する力となる。

 グレート・カンパニーのリーダーは、意思決定の拠り所について、これまでとは異なる物語を語ることができるだろう。そのなかで、新しい行動モデルを生み出せるだろう。そのモデルは、事業への信頼を回復し、我々の住む世界を変えることだろう。