日本有数の多角的事業会社であるオリックス。リースを祖業とするが、銀行、生命保険から、不動産、環境エネルギー、事業投資、そしてプロ野球まで幅広い事業を展開する。創業メンバーの一人でもあり、1980年から30年以上にわたってCEOを務め、2014年からはシニア・チェアマンに就いた宮内義彦氏に、今後企業に求められる経営や人事制度のあり方について聞いた。(聞き手/多田洋祐・ビズリーチ取締役・キャリアカンパニー長)

オリックス宮内義彦が語る「経営幹部は育成して作れるものではない」宮内義彦 オリックス シニア・チェアマン

組織は「人材の総和が最も大きくなる」ようにつくる

多田 宮内さんはすでに後継者へ経営を引き継がれている実績があります。今、日本では事業承継が大きな問題となり、事業承継や幹部育成に課題を持つ企業も多いなかで、どのように進めるのがいいとお考えでしょうか。

宮内 そもそも、幹部の育成はできるものなのか。これはうまくいくかどうかわからない話です。むしろ、幹部を「育成する」という見方ではなく、育った人がきちんと出てくる組織であることが大事だと考えています。

多田 作物でいえば、特定の苗を伸ばそうとするのではなく、しっかり実ったものを収穫できるかということでしょうか。

宮内 ええ。会社が社員を「育成」することが企業の責任なのかは疑問です。あくまで会社は一人ひとりの能力をアウトプットするところであって、教育やインプットをするところではありません。結果的に幹部が育成される環境が整っていればいいのだろうと考えています。

 理想は、社員が100%の能力を発揮できるような組織をつくること。「人材の総和が最も大きくなる」ようにできれば、人事がうまくいっている証拠といえます。もっとも、言うは易く行うは難しではあるのですが。