筆者は、フィギュアスケートよりは、将棋の方がほんの少し余計に内容が分かるので、感想を述べると、準決勝、決勝の二局とも、藤井五段の勝ち方は堂々たるものだった。

 準決勝では、攻勢に押された羽生竜王が放った意外な手(二つあった)を、藤井五段は的確にとがめて逆転を許さなかった。決勝でも、終盤の重要局面で、明らかに広瀬八段が読めていなかった好手を指して、藤井五段が押し切った。

 厳密にどの時点で優勢になったのかは、筆者の棋力(アマ四段程度)では分からないが、二局とも藤井五段は、正攻法の布陣から堂々と攻勢を取って優勢を築き、優勢になってからは、落ち着いて緩急両様を使い分け、相手に付け入る隙を与えなかった。若者が運と勢いで勝ったという内容ではなく、明らかに読み勝って勝ちを収めた勝利に見えた。

 もちろん、この日の早指し対局一局の勝敗だけで、先輩棋士よりも強いなどと結論づけられるものではないが、藤井新六段の実力が既に棋界のトップレベル付近にあることは、疑いないように思われる。

 付け加えると、同じ日には、水泳の女子200メートル自由形で、池江璃花子選手(17歳)が1分55秒04の日本新記録を出した。自らの日本記録を1秒29も大幅に更新したタイムであり、昨年の世界選手権に当てはめると、銀メダル相当の好タイムになるという。

 どれも素晴らしいものだが、いずれにあっても、十代でその世界の頂点レベルに達するような早熟性が際立つ。

若年期に活躍機会を与える重要性

 多くの日本人にとって嬉しくない事例だが、囲碁で7大タイトルを独占して国民栄誉賞に輝いた井山裕太七冠(28歳)は、先般、中国、韓国、日本、台湾のトップクラスの棋士が戦う世界棋戦LG杯で、決勝まで進んだものの、三番勝負で敗れた。

 井山七冠を破ったのは、中国の19歳、謝爾豪五段だった。顔にはニキビが目立つ少年で、段位もまだ高くないが、彼の強さも本物だった。

 さて、スポーツや将棋・囲碁のような極限の能力を競うゲームにあっては、素質がある選手を幼少期から鍛えると、十代のうちにほぼその世界のトップクラスの能力に達することが多い。

 特に、将棋や囲碁にあっては、何歳でプロになることができたかが、将来どの程度まで達するかの残酷なくらい正確な指標になる。音楽、バレエなどでも、早期からのトレーニングが肝心だ。