プロ野球“解説”界に
有望新人がデビュー
プロ野球のキャンプは紅白戦などの実戦形式の練習が始まった。
この時期、注目が集まるのが新人である。昨秋のドラフトで3球団から重複指名され、千葉ロッテに入った藤岡貴裕(東洋大出)や広島に入った野村祐輔(明治大出)、早大ソフトボール部からドラフト7位で北海道日本ハムに入団した異色ルーキー・大嶋匠らの仕上がり具合がメディアで盛んに取り上げられている。彼らはプロで通用するのか、興味津々というわけだ。
一方、それを伝える野球評論家にもひとり、有望な“新人”がデビューした。工藤公康である。テレビ局はテレビ朝日、スポーツ紙は日刊スポーツと専属契約を結んだが、そのスタートにあたって「報道ステーション」のキャスターを務めている。この解説が秀逸なのだ。
現在、行っているのが「投・球・術」と題した投手たちの解析。12球団からひとりずつ投手を選び、映像を交えながらインタビューしていくのだが、そこに工藤ならではの鋭い分析が加わり、それぞれの投手が努力してつかんだ投球術のツボ、プロとしての凄みがわかるのである。
このコーナーで取り上げられた投手は、巨人に移籍した杉内俊哉に始まり、福岡ソフトバンク・摂津正、埼玉西武・西口文也、北海道日本ハム・武田勝、東京ヤクルト・石川雅規、東北楽天・塩見貴洋、広島・前田健太と続いてきたが、たとえば日本ハムのサウスポー武田勝の回。武田は身長176センチと上背があるわけでもないし、さほど球威があるわけでもないが、先発として常に安定した投球を見せる。
昨シーズンは打線の援護がない試合が多く苦労したが、それでも11勝12敗、防御率2.46という成績を残した。一般のファンから見れば、これといった特徴のない武田がなぜ好投できるのか不思議に思える。これを工藤が解き明かしていくのだが、ここで明かされたのが、武田の左ひじが曲がっていることだった。故障の後遺症で真っ直ぐ伸ばせないのだという。