「一文字草《ひともじぐさ》」と「二文字草《ふたもじぐさ》」。
それぞれ何のことかお分かりですか?
落語をよくご存じの方なら、「一文字草」の方はピンとくるのではないでしょうか。
落語の前座噺として『寿限無』の次に有名な、『たらちね』(上方では『延陽伯』)に登場する新妻のセリフに、「一文字草」が出てきます。
「一文字草」とは、御所の女房言葉で「葱」のこと。
葱は発する気が強いので、奈良時代は「気」または「キ」と一文字で呼ばれていたようで、それを女官たちが隠語で「一文字草」と称したわけです。
葱に対して、二文字草とは「ニラ」を指します。
当時は、隠語を使うことが上品とされたようですが、なんだか回りくどいですね(笑)。
【材料】長葱…2本/酒…大さじ2/醤油…大さじ2/かつお削り節…1袋
【作り方】①長葱は4cm幅に切り、一人用の土鍋に立てて並べる。②酒と醤油を振りかけ、かつお削り節を長葱の上に乗せて、弱火で汁気がなくなるまで煮る。※小鍋ごとテーブルに出しても。
落語『たらちね』は、父親が京都出身の漢学者で、自身も公家奉公をしていたため、言葉遣いがやたら難しく、若く器量よしで財があるのに貰い手がなかった清女《きよじょ》という娘が、大家の世話で長屋の八っつぁんに嫁いだために起こる笑い噺で、公家言葉vsべらんめえ調のやり取りがおかしく、人気があります。
私事で恐縮ですが、落語歴3年の筆者が、師匠から最初に教わったのもこの噺でした。
『寿限無』や『金明竹』と並んで、言葉遊びが主体のこういった噺は、演じる方も聴く方も楽しめるので、落語の入門編としてはうってつけです。