カネ持ちは欧米に進学
日本に来るのは中間所得層

 陽さんと同じく都内の大学院に通う孫さん(仮名・25歳)も、中国での就職に一旦見切りをつけ、卒業後数年は日本で働く予定だ。

「日本の大学の学部を卒業した時、中国に戻って就職をしようかとも思ったのですが、中国の就活がかなりエグい状況になっていることを知って、いろいろ考え直しました。中国は学生の数が多いから競争は激しい。しかも、コネの力が強いので、自分の実力でいい企業に行く人は一握り。相当な努力が必要です」

 孫さんいわく、中国でいい企業に就職するには、国内の有名大学を出るか、アメリカやイギリスの大学などで修士以上の学歴を収めることがベストだという。欧米に留学するのは、それなりの財力を有するアッパークラスの家に生まれた子どもが多い。コネもなく、親の経済力も高くない学生は、国内でできるだけいい大学に進もうと考える。ただし、その受験戦争は過酷を極めるという。

「高校時代は朝7時から授業があって、夕方以降も23時まで自主学習をしていました。テストが近づくと、数日間お風呂にすら入らないで、ギトギトの頭で一心不乱に勉強する人も何人かいた」

 学年で上の方の成績だった孫さんは、高校2年のときに特進クラスに進むが、その後精神的に落ち込むことが多く、徐々にフェードアウトしていった。

「結局、中国での大学受験は諦めることになりました。当時は未来を悲観してけっこう落ち込んでいましたね。その後、もともと興味があった日本語を学んで、日本の大学に入学することになるのですが、結果的にはこれで良かったと思っています」

 中国にも一度レールから外れてしまえば巻き返しが難しいという事情があるが、海外経験というひとつのイレギュラーな手段を使えば、ややアドバンテージが上がるのだと孫さんは言う。

「私の知り合いの中国人留学生の中には、中国の4年制大学を卒業したものの、いい就職先が見つからず、日本の大学院に進学した子が多い。日本で数年働けば、それが経験として認められて帰国後にいい仕事に就きやすくなるので、それを狙っているんです。お金持ちのエリート層は欧米に行きがちなので、日本で留学する子は、やっぱり中間所得層の子がメインのイメージかな」