

石島:たとえば、ガンダム事業部や太鼓の達人事業部、鉄拳事業部という感じで、IPの数だけ事業部があるイメージでしょうか。
石川:そうです。IP別で事業計画を組めば、アウトプットは自由自在ですよね。家庭用、アーケード、SNS系などの事業部間の不毛なケンカもなくなる一方、家庭用を出した後のアーケードはじゃあこうしようとか、考えられるようになる。つまり長い目でIPの価値をいかに最大化するかを考える。たとえ、年度年度で見たら売り上げが下がったとなっても、長期計画で「ガンダム エクストリーム バーサス」の売上を立てることができる。そして、それは結果的に売上を向上させることになります。これが、IP軸と市場軸の事業部制の違いです。
石島: 話をまとめますと、バンダイナムコHDの強さは、川上(仮面ライダーのような息の長い人気IPの育成)から川下(出口戦略)までの一気通貫型ビジネスモデルを、IPを軸にした事業部が支えていることになりますか。
ただ、一般論として企業規模がある程度超えてくると、新事業ですぐ成果を出すことは難しい。バンダイナムコがあまりタイムラグを発生させずに、SNS系ゲームビジネスでも利益を確保できたのはなぜでしょう。
石川:やっぱり、ライフサイクル別出口(家庭用、業務用、SNS系)とそれぞれ用意してきたことが大きいと思います。弊社の人気筐体に「機動戦士ガンダム 戦場の絆」というものがありますが、2006年の稼働開始から今でもなお、継続して運営し続けていることが実はSNS系ゲーム事業でも生きている。どのタイミングで新たな要素を追加して盛り上げていくかっていうのは、SNS系ゲームの課金ポイントと同じなのではないかと考えています。
石島:アーケードとSNS系ゲームの類似は、他社の幹部も同じことを言っていました。なので、SNS系ゲーム事業のためにアーケード経験者を多めに雇ったそうです。
そして、アーケードとSNS系はライフスタイルは違いますが、ユーザーのお金の払い方は似ている気がします。ユーザーは気が済むまで払い続けるという特徴があるというか。だからふたつとも、結果的に経済学で言うところの価格差別戦略を採用できる。