ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
元「広告批評」編集長・河尻亨一の「月刊マーケティング時評」

ソーシャルが生み出す、これからのビジネス、
マーケティング、クリエイション

対談●ITジャーナリスト・イケダハヤト×河尻亨一

河尻亨一 [元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]
【第3回】 2012年2月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
4
nextpage

河尻 ソーシャルメディアのような新しいテクノロジーが“タックル”を可能にしているんでしょうね。かつてなら問題を解決しようにもやりようがなかったり、実現へのハードルが高かったことでも、比較的低予算かつ少人数で実現できるようになっている。

photo gingalighter

イケダ ええ、でも“タックル”するための条件があると思うんです。いろんな社会的問題に気づいていて、それをなんとかしたいと考えている人はたくさんいるのですが、時間と心に余裕がないと動けませんから。

 持つものが少ないという要素も大事だと思います。自身の生活コストが低いからこそ、最初はおカネにならないプロジェクトにもトライできるわけです。そういうノマド的な文脈にいる人はごく一部に過ぎないとも思います。

河尻 今、話に出た“ノマド”というライフスタイルに関しては、90年代の早い時期から一部の学生たちのあいだでなかば憧れのように語られていたものですが、その頃に比べて今はもう少し実現しやすいのでは? という気もしています。

イケダ そうかもしれませんね。僕も含めそういった人たちが担えるものがあると考えています。たとえばいま、先進国が共通して向き合っているのは「公共が崩壊していく」事態だと思うんです。

 実際アメリカだと消防車を呼んでも来ない地域があるらしく、そういうところでは民間が消防業務を担わざるをえないわけです。つまり経済がシュリンクして、民間の力で公共を支え直す必要に迫られているのですが、その体制ができれば行政コストも削減されますから、そこにニーズはあるだろうと。

河尻 雇用やジョブが生まれる?

イケダ まあ現状ですと、収入面での期待はあまりできないのですが。個人的なことで言うと、僕は今仕事の約3割くらいしかおカネを稼ぐ時間にしていないんです。残り7割はボランティアで、NPOのサポートやイベントの企画といったコミュニティを支える活動に当てています。

 しかしその7割も短期的にはお金にならないとはいえ、中長期的にはその人のセーフティネットになるのでは? というふうにも考えています。

河尻 たしかに金銭に縛られない人間関係は、それがきちんとした信頼感を伴って構築できれば心強くもある。その意味では、いわゆるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が支える“スマートな清貧”とでもいった価値観やライフスタイルは、選択肢の一つとしてあり得るものでしょうね。

イケダ 多摩大学の公文俊平先生や岡田斗司さん、山口揚平さんがおっしゃるような「評価資本」や「評価経済社会」「信用創造」といったアングルからも、ビジネスやマーケティングを考えてみることは重要だと思います。かつてとは違うやり方の成長があるかもしれませんから。

 アカデミックな理論としてではなく、身の回りのサービスとしてすでに形になっているものもあります。たとえばアメリカには「NeighborGoods」というサイトがあるのですが、これは近所の人とものの貸し借りができるサービスなんです。

 ハシゴなどの備品を近所の人から安価に借りるのは経済的にも合理的だし、サスティナブルでもあり、地域コミュニティの再生にもつながります。10年後には日本でもそういったことが普通に行われるようになるのでは? と僕は予想しているのですが。

previous page
4
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

河尻亨一
[元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]

1974年、大阪市生まれ。99年、早稲田大学政治経済学部卒業。お茶の水美術学院講師を経て、2000年より雑誌「広告批評」(マドラ出版)に在籍。08年、編集長就任。10年、同社退職後、雑誌・書籍・ウェブサイトの編集、企業の戦略立案およびPRコンテンツやイベントの企画・制作を手掛けるほか、講演活動なども行っている。

元「広告批評」編集長・河尻亨一の「月刊マーケティング時評」

元「広告批評」編集長・河尻亨一氏が、ヒット商品、イケてる人や企業、話題の現象……などなど、「ヒト・モノ・コト」にまつわる旬のテーマをマーケティングの視点から読み解く時代批評です。

「元「広告批評」編集長・河尻亨一の「月刊マーケティング時評」」

⇒バックナンバー一覧