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スマートフォンの理想と現実

音楽配信はすでにピークアウト。曲がり角にさしかかったケータイコンテンツ産業の明日はどっちだ

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第18回】 2012年2月23日
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 実際、消費者側の意向に関わらず、スマートフォンへの移行は止まらないだろう。国内市場向けにフィーチャーフォンを作り続ける体力がもはやメーカーに残されていないのは、かつてフィーチャーフォンで一世を風靡したNECグループの携帯電話製造部門で、全体の1/4にあたる500人程度の希望退職を募ることになったことからもうかがえる。それに、このところ市場で目立つのは、海外メーカーのスマートフォンばかりである。

 こうした中、コンテンツ事業者も否応なしに環境変化に適応しなければ、生き残れない。では、スマートフォン時代のコンテンツサービスとは、一体どのようなものなのだろうか。

 クラウド型にその答えを求める向きは少なくない。音楽配信サービスでいえば、欧米で人気のSpotifyのように、広告モデル(ないしは有料課金による広告なしの無制限)で音楽を聴き放題、というサービスが、スマートフォンに適しているという意見だ。実際こうしたサービスへのチャレンジは、国内でもKDDIが“lismo unlimited”としてスタートさせている。

 またコンテンツの種類の傾向を指摘する向きもある。冒頭で触れた映像配信サービス等は、画面の大きなスマートフォンの登場に「いよいよ本番」と胸躍らせているだろう。実際、NTTドコモとエイベックスが合弁で以前より事業化していた“BeeTV”は、NTTドコモのdマーケットVIDEOストアへのコンテンツ供給を通じて、事業拡大を狙っている。また海外では年始のCESでNOKIAが商業コンテンツを軸にしたスマートフォンのエコシステム構築を発表した。

 あるいは他のメディアとのハイブリッドに活路を見出す向きもある。先日編成発表を行ったmmbiのマルチメディア放送サービス“nottv”は、映像伝送に放送波を使うことでケータイのトラフィック問題を回避しつつ、映像サービスとネットの連携を目指している。また物理的なハイブリッドではないが、以前の記事でも触れたスマートテレビにおけるタブレットとの連動等も、そうした方向性を指向しているといえるだろう。

 では改めて、2012年のコンサルタントとして、次に何が「来る」と言えるか。それはお代を頂戴した上で…といきたいところだが、それでは悪徳商人と後ろ指をさされかねないので、手がかりをお伝えしておくと、やはりスマートフォンならではの特徴や制約を活かしたサービスが、当面は市場を牽引することになるだろう。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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