神奈川がんセンターで重粒子線治療が継続危機、裏に構造的問題1月29日に開催された県議会で、ある県議は県、病院、病院機構の関係が微妙になっている点を指摘した Photo by Masami Usui

 神奈川県議会の厚生常任委員会は1月29日、県立がんセンター(横浜市)の放射線治療が非常事態に陥っている問題を終日にわたり議論した。地域がん医療の拠点である同病院で放射線治療医が相次いで退職、がんの放射線治療に支障が生じているのだ。

 医師の不足で新規受け入れを制限するなど、すでに患者に影響が及んでいる。先進医療に指定された重粒子線治療は、人員配置の要件を満たせず継続できなくなる危機に直面。建設に約120億円を投じて2015年に開設された重粒子線施設が、稼働停止でただの箱になりかねない。

 神奈川県は急きょ、県幹部らをメンバーにして、原因究明を目的とした調査委員会を昨年12月に、放射線治療医を確保するための対策委員会を今年1月に、それぞれ立ち上げた。

 対策委員会は1月24日、他の医療機関に派遣の協力を仰ぎ2月と3月は医師を確保できたと報告。同日に調査委員会による調査結果も提出され、パワーハラスメント事案への対応に不満があったことや、コミュニケーション上の問題があったと報告された。

 これに対し、県議たちは29日の議会に所管の県幹部らを招き、原因の調査および報告内容が不足しているなどと追及した。県議たちは調査が核心に触れていないと感じたのか、さらに病院長、病院を運営する県立病院機構の理事長、事態の対応に当たっている副知事を参考人招致する要望を出した。

 これを受けて当日に応じた参考人は副知事だけ。他の人物は姿を現さなかった。