日本の家計の大半は、資産形成エンジンを非効率なまま放置している「Bさんケース」です。
アメリカでは、勤労所得と財産所得の比率は3:1ですから、100万円の勤労所得を得ているあいだに、資産が働いて33.3万円の財産所得を生んでくれる計算になります。
一方で、日本人の同比率は8:1です。がんばって働いて100万円を稼いでも、資産が生んでくれる利益は12.5万円です*。
わずかな違いのようですが、これが毎月・毎年と積み重なっていけば、どういうことになるかはおおよそ想像がつくのではないでしょうか。
節約家ほど「ムダな出費」をしている
私はいわばこの資産形成エンジンの整備士です。
家計という“クルマ”にとっていちばん大切なことは何だと思いますか?
それは「必要な距離を“走り切れる”かどうか」です。
私たち人間には寿命があります。そこがまず家計と企業財務との決定的な違いです。
バーチャルな存在である企業には、無期限に続いていくという前提(これを会計用語でゴーイング・コンサーンといいます)がありますが、家計にはいつか“終わり”が来ます。もちろん、子孫に遺産を残したい人もいるでしょうが、「少なくとも自分たちが生きていくには、最低限どれだけお金が必要か」という発想でアプローチが可能です。
ですから、このクルマは「コースを最後まで走り切れる設計になっている」ことが肝心です。企業の場合は、燃料が尽きたりエンジンが止まったりしても、廃業にすればそれで済みますが、私たちの家計はそうはいきません。家計が止まれば、家族が生活していけなくなるからです。
クルマの例をもう少し膨らませてみましょう。私たちが働いて得られる勤労所得は、クルマにとってのガソリンです。言ってみれば、勤労所得だけに頼る家計とは、ガソリンだけで走るガソリン車です。
ガソリン車の走行距離を伸ばすためにできることは、ガソリンをたくさんかき集める(所得を増やす)か、燃費をよくするかのどちらかです。燃費向上のためには、搭載されたパーツを捨ててクルマを軽量化する、つまり、食費や生活費、娯楽費などのコストを節約するしかありません。これは大切なことではありますが、当然、限界もあります。
一方、このクルマのエンジンそのものを取り替えて、ハイブリッドカーに改造したらどうでしょうか?
ハイブリッドカーはガソリン(勤労所得)の燃焼によって走行しながら、同時に蓄電池への充電を行います。これがまさに財産所得を生み出す資産形成エンジンです。
ハイブリッド家計は、蓄積された電気による駆動力も利用して走ることができるため、結果的に燃費もかなりよくなりますし、当然、走行距離も格段に伸びます。
もしもガソリンの給油ができなくなっても(つまり、仕事をリタイアして勤労所得がなくなっても)、それまでにチャージした電力を使うことで、余裕を持って人生を走り切ることができるというわけですね。