「いいこと」を書いても
質問に答えていなけりゃ不合格

低評価の解答例は、一見、正しい解答に見えるかもしれませんが、「問題文で問われていることに答えていない」という致命的なミスを犯しています。

問題文で問われていることが「どう取り組んでいくべきか」なのに、書いていることはひたすら「移住者を増やすことの意義、それが求められている背景」です。取り組みの内容については末尾の「市の魅力を全国にPRして移住者を増やし」だけで、中身が何もありません。その方法論こそを、書かなければなりません。

このように、問題の意味を理解せずに書いている答案は非常に多く、一度指摘しても、二度、三度と間違う人が少なくありません。このほかにも、下記のようなミスを非常に多く見かけます。

・「あなたはなぜ本学を志望しているのか理由を述べなさい」と聞かれているのに、どこの大学でも同じように言えることしか書いていない。その大学ならではの理由がない。

・「筆者の意見を踏まえ、あなたの考えを述べなさい」と聞かれているのに、筆者の意見を踏まえないで書いている

・「あなたは職場のリーダーとしてこれらの職場の課題にどのように取り組んでいくか」と聞かれているのに、「職場のリーダーとして」の視点がなく、第三者的な立場から書かれている

なぜ、「聞かれていることに答える」という大前提となるようなことで、これほどまでに多くの人がミスを犯すのでしょうか?

「聞かれていること」に
正しく答えない人の3大特徴

聞かれていることに答えていない答案が続出する理由は、3つあります。

(1)「問題文の意味を理解して書く」の重要性がわかっていない

問題で聞かれていることと違うことを答えれば、絶対に良い評価はつきません。

たとえば、数字の試験で「1+2はいくらになるか?」という問題に「1×2=2です」と答えたら「×」です。計算そのものは正しくても、聞かれていることと異なることを答えているのですから、0点です。この理屈は誰でも理解できます。

しかし、小論文試験になるとそれが意識できなくなり、問題文を「なんとなくわかった」状態で書き始めてしまうのです。

問題を正しく理解しないまま書くことは、数学で言えば0点になるほどの重大ミスだということがわかっていれば、慎重に問題を読む習慣がつくはずです。

(2)言葉の意味を突き詰めて考えていない

次の例題を見てください。

・「現代において文学を学ぶ意義とは何か、述べなさい」
・「コンプライアンスの重要性について述べよ」

「意義」「重要性」などは、一見しただけではわかりにくい言葉です。そこで、解答文を書く前に、指示されている言葉の意味を、あいまいにしないで考えるのです。

「意義」とは価値・値打ち、などを意味します。そのように別のやさしい言葉で置き換えてみると、「『文学を学ぶ価値・値打ち』について書けばよいのだな」と理解しやすくなります。

「重要性について述べる」も、わかるようでよくわからない表現です。実際、「コンプライアンスの重要性について述べよ」という出題があると、「コンプライアンスを自分がどう実践してきたか」という観点から書く人がいます。

そこで、たとえば「運動を続けることの重要性」というように、別のやさしい文例に同じ言葉を当てはめてみましょう。「運動を続けることで、ストレスを解消できるし、体力がついて病気の予防にも役立つ。『重要性を述べる』とは、つまり『なぜそれが大事なのか』を述べることだな」と理解しやすくなります。

(3)書いているうちに問題文の趣旨からズレていく

書き始めた時は問題の意味を意識して書いていたけれども、だんだん問題文の趣旨からズレていく、というケースがあります。

この事態を防ぐためには、繰り返し問題文に目をやって、「何が問われているのか?」をチェックすることです。

私自身、模範解答を書く際は、20回、30回と問題文に目をやり「問題で聞かれていることからズレていないか?」「本当にこの解答の方向で良いのか?」と何度も確認しながら書いています。たとえ私自身が作成した問題であっても、です。人間の意識は、それくらいズレやすいものなのです。

一貫した内容にするためには、問題文を正しく理解した内容を、自分の言葉で問題用紙に書いておき、それを何度も確認しながら書いていくと良いでしょう。

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