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ポスト・ビッグデータ時代の経営

20年前AIに敗れてから
チェスはどのように進化してきたのか

――人とAIとのマリアージュを考える

KPMGコンサルティング
【第5回】 2018年4月12日
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2.「人工知能only」は多大なリソースとリスクを伴う

 先ほどの人間のやりたがらない3Dをすべて人工知能で代替する「人工知能only」を達成するためには、多大なリソースとリスクを伴います。なぜなら、高度な意思決定は単純なデータ分析では到達不可能な複雑な判断(効果、政治的等)が求められるためです。また、人工知能が意思決定をした場合、その判断に対する責任の所在をどうするのかといった課題が生じます。何より、このような高度な意思決定が可能な人工知能を創造するには相当なマシンリソースが必要となります。

 最先端技術を追求するテクノロジー大企業でもない限り、利潤を追求する企業として「人工知能only」はビジネス的に現実的な選択ではないことが分かります。

 2009年のGoogle Carテスト走行後の完全自動運転車の開発や商用化にも巨額な投資が行われており、追随できそうなのは、TeslaのAutopilot程度でした。また、事故時の責任の所在についてはまだこれといった対策は講じられていません注3。一方、人とテクノロジーの融合であるADASは、既存の車にセンサーと演算ロジックの追加のみで具現化できるサービスであり、必要とされるリソースも完全自動運転車に比べて著しく少なくなります。

 企業内の業務においても、人工知能で完全に代替することの可能な領域は非常に限定的です。ビッグデータ分析によりデータサイエンティストが示唆を提供することは可能ですが、そのための膨大なデータの確保、運用及び管理、インフラ導入が必要となり、大規模な投資を要します。このような大規模な変革を実施できる企業は、現実的には安定的なビジネスの利潤が保障されているほんの一握りの大企業に限られるでしょう。

 人工知能により完全な自動化を目指すよりも、人(特に専門家)を十分に活用することを前提に、不足した部分を人工知能で埋める方式のシステム設計を行うことは、最も妥当且つ未来志向的なフレームワークであると言えるでしょう。

3.相互共存型フレームワークで企業の社会的側面を支援

 人工知能が人を完全に代替するのではなく、人の能力を拡張することに主眼をおいたアプローチをとることにより、人と人工知能が最適に共存できる組織づくりが一番低コストで実現でき、人の職が失われる心配がなくなります。

注3:2018年3月18日、試験中だったUberの自律走行車によって死亡事故発生

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