ただ、こうした批判は的外れだ。「物を作っている製造業は偉いが、物を作っていない金融業は偉くない」という価値観から出ている発言だとすると、日本中の労働者の76%を敵に回すことになりかねない。労働力調査によると、製造業と建設業で働く人は全体の24%に過ぎないからだ。

優秀な人材が各産業に
分散されることが望ましい

 金を預けたい人と、金を借りたい人が世の中に大勢いるときに、金融業がなければ金を借りたい人は借りることができず、預けたい人も預けることができない。そんなときに「借りたい人と、預けたい人は銀行へきてください」と言えば、両方をつなぐことができて皆が助かるのだ。つまり、銀行は必要なのだ。

 例えば、金融危機で銀行が貸し渋りをすると、資金繰りに困って倒産する中小企業が多発する。こうしたことからも分かるように、「心臓は普段は特に感謝されないが、止まってみるとありがたみが分かる」といったイメージだろう。

 もっとも、銀行の方が他の産業より優秀な人材を必要としているか、というと、そこは疑問だ。優秀な人材が適度に各産業に分散されるならば、それは望ましいことだ。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)