エステ業界の現状は、いまだ厳しい。不況の煽りを受けて新規の客は減り、既存客の来店サイクルも長くなっている。また、客単価の減少に拍車をかけているのが、改正特定商取引法と改正割賦販売法による信販の規制強化だ。
信販・クレジット業者に対し、加盟店調査や与信契約のクーリングオフの新設、既払い金の返還、支払可能見込み額を超える与信の禁止などが義務付けられたことにより、信販・クレジット会社のエステ離れが進み、サロンではコース契約が組みにくくなるなどの影響が出ている。
明るいニュースに乏しいエステ業界だが、ここ最近、業界の新興勢力として勢いを増している「セルフエステ」が新しい風を起こしつつある。
「セルフエステ」とは、エステティシャンに施術してもらう従来のエステとは異なり、客本人が自分自身で施術を行なうサロンで、その気軽さから新しい顧客層が掘り起こされ、人気を集めているのだ。
「セルフエステ」が支持される最大の理由は、リーズナブルな価格設定にある。内容にもよるが、1回につきワンコイン500円~3000円台が相場で、女性にとって財布から出しやすい値段となっている。この金額なら、たとえばランチを楽しむ感覚でサロンに足を運ぶことができる。
価格が手頃な反面、自分自身で施術を行なうとなると、気になるのは中身だが、エステティックサロンだからこそのスペシャル感は十分に味わえる内容と言っていいだろう。専門のインストラクターからアドバイスを受けながら、プロ仕様の美容機器やスキンケア製品を存分に使うことができるのだから、自宅でのお手入れとは一線を画するものである。
では、「セルフエステ」は低迷が続くエステ業界の救世主となり得るだろうか? 「セルフエステ」がこの先今よりもっと認知されるようになり、支持を拡大しても、従来型のエステに取って代わる“スタンダード”とはならないだろう。「セルフエステ」はあくまでも消費者の多様化するニーズに応える1つの選択肢にすぎない。
しかしながら、エステ業界に新しい業態を生み出した「セルフエステ」の成果は、業界の困難な局面を打開するための道標となることは確かだ。エステに対する潜在的な需要は大きい。ターゲットを見直せば、新たなマーケットを獲得できるかもしれない。重要なのは柔軟な業態開発だ。エステ業界が次に打つ手は……? 今後も興味深く見守っていきたい。
(おおたゆうこ/5時から作家塾(R))