もちろん、各分類のどれかだけに取り組むことは稀であり、複数の要素からなる戦略の中で優先度を立てて戦術を実行している、という前提の上で、これから紹介する事例に触れていただけると嬉しく思う。

有効求人倍率には現れない「本当の課題」

 今回の記事で紹介する宮崎県日南市の取り組みは、先述した4分類でいうと左上と左下にあたるもので、つまり「地元住民のための雇用最適化」だ。

 ITを中心としたスタートアップ企業の誘致を中心に注目を浴びることの多い同市。当初のミッションは、外貨を獲得して市内に雇用を生み出すことだった。その成果もあり、市内の有効求人倍率が上がってきた現在では、新たなフェーズの課題に向き合っている。

 詳しくは後述するが、4年前、同市に「マーケティング専門官」として着任した田鹿倫基氏は、現在のミッションについて「単純に雇用を増やすことではなく、人口ピラミッドをマネジメントすること」だと語る。

「地域で問題が発生したとき、その原因になるのは人口減少ではなく、年齢別人口構成にゆがみが発生することなんです。田舎の限界集落の問題も、都会の待機児童の問題も、日本のお年寄りの社会保障費を現役世代が支えられるのか問題もすべて年齢別人口構成の歪みが引き起こしています。その偏った地域の人口ピラミッドを補正していくことで多くの問題は解決に向かいます。日南市の場合は具体的には20~30代の人口を増やすことと出生数を増やすことが求められています」(田鹿氏)

 田鹿氏がこう語るのには、ある数字上の裏付けがある。それは「実は、ほぼすべての自治体で有効求人倍率が1を超えている」という事実。「やっぱり地方に仕事がないことが課題だ」「とにかく雇用をつくればいいのではないか」と発想しがちだが、事はそう単純ではない。