自身より規模が大きなピルキントンを買収し、グローバル企業に変貌を遂げた日本板硝子。しかし、期待されたシナジーを出せないまま、その重荷に苦しんでいる。だが出口はまだ見えてこない。
日本板硝子の業績が急激に悪化している。2期連続で最終赤字を計上した後、一時は回復したものの2012年3月期の見通しは、営業利益を250億円から40億円に、当期損益を150億円の黒字から20億円の赤字に大幅下方修正した。
日本板硝子といえば、06年、板ガラス世界大手の英ピルキントンを傘下に収め、「小が大をのみ込む」と話題をさらった。当時、買収に投じた費用は、総額約6160億円。日本板硝子の売上高の2倍以上の額だった。
確かに、買収で一気に世界29ヵ国に生産拠点を持つグローバル企業へと変貌を遂げた。板ガラスのシェアは旭硝子や仏サンゴバンと肩を並べたほどだ。
ところが、それから6年が経過した今なお期待されたほどのシナジーを出せないばかりか、逆にその重荷に苦しんでいるのが現状だ。
要因はいくつかある。まずは本業不振。売上高の4割を占める欧州で、不況のあおりをもろに受けている。事業の柱である建築、自動車用ガラス共に需要が低迷、一方で燃料コストは上昇し、利益を圧迫している(図1)。
成長のドライバーと位置付けていた太陽電池用ガラスもさえない。主要顧客が大幅な減産を発表したほか、世界の市況が軟化し、販売価格下落が続いている。
とはいえ要因は外部環境の悪化だけではない。「リーマンショック後、欧州でのリストラを十分やり切らないまま、新興国へ期待を寄せるあまり、積極的に投資したことが裏目に出ている」と、戦略ミスを指摘する関係者は多い。