上司たるもの「寛容」であれ、と論語も教えている

これまで2000社以上の指導を行ってきた経営アドバイザー・田口佳史氏の新刊書『超訳 論語 「人生巧者」はみな孔子に学ぶ』の中から、ビジネスの役に立つ論語を「超訳」でわかりやすく解説する。今回の論語の教えは、上司に必要な「寛容さ」について。厳しいだけでは、部下を育てることは難しい。

ミスには寛大に、手柄にはちょっと厳しく

上(かみ)に居て寛(かん)ならず、禮(れい)を爲(な)して敬せず。

上司は部下に厳しく接するだけではダメだ。ミスがあっても、一回は目をつぶってやるくらいの寛大さが必要である。(八イツ第三/66)

 部下は厳しく育てなければいけないが、ちょっとミスをしただけで人格否定をするような叱り方をするのは感心しない。立ち直るのが難しくなるからだ。

 一回くらいは目をつぶって、「今回はしょうがないけど、次からは同じミスをしてはいけないよ」とやさしい言葉をかけてあげるのがよい。そのほうが部下は反省を深めるし、汚名返上とばかりにがんばることができる。

 しかし甘すぎるのも考えものだ。俗に「部下は褒めて育てろ」とはいわれるものの、大した成果もあげていないのに褒めても、部下は心から喜べない。“褒め殺し”にされているような気分になる場合もある。

 そしてとくに注意が必要なのは、部下が手柄を立てたときだ。褒める一方だと、有頂天になりかねないので、一つ釘を刺しておくといい。「よくやった。がんばったな。でもこれでよしとするなよ。君にはもっとレベルの高い仕事を期待しているよ」などといってやれば、部下も「勝って兜の緒を締めよ」と気持ちを引き締めるだろう。