セクハラ次官事件や貴乃花親方vs相撲協会、レスリングのパワハラ告発など、内部告発の嵐が吹き荒れている。ムラ社会の膿を出すために、時には劇薬が必要にもなる。ただ、告発するからには、正しいステップを経た方が効果が高い。今回は「正しい内部告発」についてご教示する。(ノンフィクションライター 窪田順生)
内部告発の嵐は日本の組織を
健全化に向かわせるか?
「内部告発」の嵐が吹き荒れている。
大騒ぎになっているテレビ朝日の女性記者の「新潮リーク」は、財務官僚の横柄さもさることながら、日本のマスコミが、「記者クラブ」という閉鎖的なムラ社会のなかで、高級官僚の「接客係」にならざるを得ないという醜悪な現実を、ものの見事に浮かび上がらせた。
少し前には、貴乃花親方が日本相撲協会に許可を得ることなく、テレビで角界の自浄能力のなさをぶちまけ、レスリング界でも、国民栄誉賞に輝いた伊調馨氏やコーチたちが、組織に蔓延するパワハラ体質を内閣府へ訴えた。
ほかにも、神戸製鋼のデータ改ざん、三菱自動車のデータ不正、日産の完成車検査、東レのデータ不正など、「内部告発」によって組織の構造的問題が明らかになったケースは枚挙にいとまがない。
「息苦しい密告社会だ」と辟易する方も多いだろうが、「裏切り者」を出した組織を見てみれば、自身が置かれた厳しい現実を直視せず、絵空事の美辞麗句を並べ立ててきたところが圧倒的に多い。クサいものにフタをして山積みになったツケを、単にここにきて「一括払い」させられているだけ、と言えなくもない。
かつてP・F・ドラッカーが言ったように、社会のあらゆる「組織」は、どうしても「全体主義」という独善の罠に陥りやすい。それを避けるには組織の「外」とつながり、そこで得られた「結果」を真摯に受け止めて、検証を繰り返していく「フィードバック」しかないと説いた。そういう意味では、日本型組織も、ようやく「内部告発」というフィードバックが働き始めたと言える。
ということで、内側からの声だけではこの組織は良くならない、と義憤に駆られた組織人のみなさんは、ぜひ臆することなく「告発」に踏み切っていただきたいと思うのだが、そこで注意をしていただきたいことがある。