リーダーは「まっすぐな人」が良い、と論語は説く

これまで2000社以上の指導を行ってきた経営アドバイザー・田口佳史氏の新刊書『超訳 論語 「人生巧者」はみな孔子に学ぶ』の中から、ビジネスの役に立つ論語を「超訳」でわかりやすく解説する。今回の論語は、企業もリーダーも、高い倫理を持たなければいけない、という教え。

「地位」が上がるごとに「私欲」を減らせ

士(し)にして居(きょ)を懷(おも)うは、以て士と爲(な)すに足らず。

権力は公に尽くすためにある。私利私欲を満たすほうに流れるような人間に権力を持たせるわけにはいかない。(憲問第十四/336)

 社会的なポジションが高くなればなるほど、相対的に私利私欲は減らしていかねばならない、というのが孔子の考えだ。

「地位が上がれば、お金がたくさん入るし、衣食住に贅沢したっていいのでは? 地位の高い人がみすぼらしく暮らしているのはちょっとみっともないような……」と思うかもしれないが、まったく逆。地位が高い人には「公」のために存分に力を尽くせるよう大きな権力が与えられているのだから、本来そこに「私」の入る隙間はない。

 その意味で、西郷隆盛は実に偉大であったと思う。明治維新の功労者でありながら、生涯、周囲に「新築されたらどうですか?」といわれるようなボロ家に住み、粗衣粗食を貫いた。それだけに、かつては貧しさに耐えて大志に燃えていた大久保利通ら閣僚たちが贅沢な暮らしに耽る様を嘆いた。「国民の暮らしを豊かにするのが務めであるのに、国のリーダーたる自分たちが贅沢してどうする」と。高い地位を得た者は高い報酬を得る対価として、社会貢献をする義務を負うのが本来である。