ドトール統合、星乃珈琲店立ち上げ、日レス大林会長が描くブランド革新Photo by Yoshihisa Wada

経営統合の後は引退するはずだった

 日本レストランシステム(日レス)は、2005年度に売上高経常利益率21%を記録して外食業界トップとなった。これで03年の上場時の「経常利益率20%」という公約を果たすことができた。

 私は、「株主への公約を果たせたのだから、そろそろ経営の一線から引きたい」と思うようになった。だが同時に、「なにかやり残したことがある」という違和感も抜けなかった。

 しばらく考えていると違和感の正体らしきものが見えてきた。「日レスは中途半端だ」。確かに利益率では外食トップになったが、売上高は300億円弱で50位ぐらい、利益額は20位ぐらいだった。

 小さいながらも業績も財務内容も良い会社はできたが、もう少し大きな規模の会社にできないか。特にダイエーや西友などのスーパーマーケットの衰退を見ていると、生活に大きな変革をもたらした業界ほどいや応なしに時代の淘汰(とうた)の波にさらされる。外食も、同じような道を歩むに違いない。

 そこで生き残るには、もう少し規模が欲しい。1000億円ぐらいが最低の単位ではないかと感じていた。

 すぐに浮かんだのがドトールコーヒー(ドトール)の創業者である鳥羽博道さんの顔だった。当時のドトールは売上高が686億円、利益率は7%で堅実な経営を続けていた。ドトールと日レスが経営統合をすれば単純合計では売上高は964億円、経常利益は106億円、利益率11%となり、40業態、約1800店舗を抱える「飲と食の総合外食」になれる。

 実は私と鳥羽さんは旧知の仲だった。私が証券会社を辞めて外食業界に飛び込んだきっかけは、ピザで大当たりをした「ジローレストランシステム」の経営者である沖広治さんの勧めだったことは連載の1回目に紹介した。

 独立後、私は沖さんの事務所に机を置かせてもらい、外食のいろはを勉強させてもらっていたのだが、当時からジローにコーヒーを納入していたのが鳥羽さんだ。