中国との間で3800億ドルの貿易赤字を抱え、米国のアプローチは極めて強硬で、2年余の間に2000億ドルの赤字削減を要求するといった大幅な是正を求めた。

 さらにハイテク産業への国家の介入撤廃や知的財産権保護の抜本的措置を求めるなど、共産党による経済への介入に直接、切り込むような行動をとっている。

 中国は台湾問題ともあわせ、米国の意図に疑心暗鬼になっているのか、米中関係はここ数年の協力から厳しい対立と変わると考えているようだ。

 こうした状況を見てとって金正恩委員長は中国に対する働きかけを始め、この40日間に2度にわたり訪中し、一時冷却した中朝関係を復活させる行動に出た。

 北朝鮮にとって米国との交渉は容易ではないと考えているのだろう。

 まず韓国の文政権の北に宥和的な姿勢に乗じ南北首脳会談から始め、中国のバックアップを得て米国と向き合うという姿勢をとっている。仮に米朝首脳会談が成功せず、結果として軍事的対峙の可能性が高まっても、中韓は戦争を避ける行動に出るだろうという読みもあるのだろう。

 またロシアは米国のイラン核合意からの離脱を、むしろ中東におけるロシアの影響力を強めることになると見ているのだろう。既にシリア問題ではイランやトルコと連携し主導権をとっている。

 ウクライナ問題で欧州から孤立しているが、イラン核合意を巡っては欧州と協調姿勢をとることができると考えていよう。

「ハイリターン」となるか?
「第二の冷戦」のリスクも

 もし6月12日の米朝首脳会談が北朝鮮の核廃棄に向けての実質的で重要なステップで成功だと評価される結果になれば、トランプ外交はハイ・リターンのプロセスを進むことになるかもしれない。

 北朝鮮問題の進展がイラン核合意の再交渉に繋がっていく可能性がないとは言えないし、中国との関係についても経済問題で中国が妥協することは十分考えられる。ロシアは引き続き中東で米国のつくった秩序を壊そうとするだろうが、ロシアが中国と連携しないでできることは限られる。

 冷戦時代のような対立再燃の悪循環が始まるか、それとも戦後の世界秩序を変えるような高いリターンにつながっていくのか。高いリターンになればトランプ大統領への支持は高まることになるだろう。

「ハイリスク、ハイリターン」のトランプ・ゲームの帰趨は世界を大きく変えそうで、注視しなければならない。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)