首相官邸の「権限」を拡大・整備したほうが不祥事は減る

 野党が「18連休」の審議拒否の末に、国会審議に戻ってきた(本連載第182回)。しかし、「働き方改革」(第177回)などの重要法案の審議は深まらないままだ。

「森友学園問題」(第178回)、「加計学園問題」(第158回)「南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の“日報隠し”問題」(第179回)、「裁量労働制に関する厚労省の不適切な調査データの問題」(第177回)と、次々と新しい不祥事が明らかになってきた。それにかかわる閣僚など政治家の「失言」や、官僚による嘘の上塗りを重ねているような答弁が続き、野党がさらに態度を硬化させている。

 また、野党が延々と疑惑追及を続ける狙いは、「働き方改革」と「IR(統合型リゾート)実施法案」を廃案に追い込むため、時間をできるだけ稼ごうということでもあるだろう。今後も、委員長解任決議、大臣不信任、議院運営委員長(本会議を立てる権限がある)解任決議、議長解任決議、内閣不信任案という、ありとあらゆる手段を使って、国会を止めようとするだろう(第115回)。「フィリバスター(議事妨害のための長時間演説)の世界的名手」立憲民主党の枝野幸男代表や社民党の福島みずほ氏の登壇もあるのだろう。

首相の「権力」は強くなったが
首相の「権限」には制度的不備がある

 しかし、延々と続く不毛なやり取りも、いつかは終わる。そして、不祥事の背景にある、政治・行政制度の問題点を解明し、制度改革を検討することになるだろう。今回の様々な「疑惑」は、「安倍一強」と呼ばれる首相官邸の圧倒的権力が、官僚組織の首相に対する「忖度」を生んだことが事の本質だと考えられているからだ。

 既に、さまざまな政治家や識者が、制度改革について発言を始めている。その方向性は、基本的に「首相の権力・権限」をいかに弱体化させるかだ。また、不祥事の渦中にある財務省や厚労省を解体する好機と捉える者もいる。だが、不祥事に関連付けて、首相の権限を削減し、官庁を解体するのは、いささか危険な動きである。政治・行政制度の改革というのは、誰かに罰を与えるために行うものではない。