全面的に変えようとせず
マイナーチェンジするだけでいい
新年度を迎えるにあたり、被災地の新聞にはこんな見出しが躍りました。
「さあ新年度、いよいよ復興へ」
3月までは中止されていた制度が4月1日を機に元に戻る。たとえば、3月までは違う場所でやっていた運転免許証の更新を、4月1日から元の場所に戻したそうです。
1月1日からでもなく、3月11日からでもなく、多くのことが4月1日から変わるということに不思議な感覚を覚えました。
もちろん、4月1日をきっかけに使うのは悪いことではありません。1枚ページがめくれた、ちょっと上着を着替えたという程度の感覚であれば構わないと思います。
しかし、そんなことをしたところで被災者の気持ちの持ちようが変わることはないでしょう。なかには元に戻すことで被災者に不利益になることもあると思います。「さあ新年度」という号令によって、すべての面において「変わりなさい」というムードになるのは不自然な感じを受けてしまいます。
当たり前のことですが、変わる部分もあれば変わらない部分もある。この感覚を自然に持っていればいいのではないでしょうか。人格という点で見れば、全面的に変わってしまうことはまったく不自然です。
診察室を訪れる患者さんに短所を尋ねると、多くの人が「人に左右される」「引っ込み思案」だと言います。彼らと話をしていると、こういう性格だから損をしていると言い、会社でもできれば他の人のようにバリバリやりたいと言います。
しかし、その人のチャームポイントは、少しオドオドしている点であり、遠慮しながらおくゆかしく喋る点だと思います。その人が突然人前でペラペラ話すような人になってしまったら、この人の持つ本来の魅力はなくなり、どこにでもいる単なる仕事のできる人になってしまうだけです。
この場合、短所を全面的に変えるのではなく、たとえば会議とかプレゼンのときに少しだけ大きな声を出してみるなどのマイナーチェンジをすればいいだけの話です。ちょっとしたトレーニングでできる単純でテクニカルな話です。
自分を変えようとするあまり、自分の良さまで消してしまうのは非常にもったいないことだと思えてなりません。