極端のほうがむしろ受け入れやすい

 昨年の秋に出版された、経済学者の橘木俊詔さんとの対談本『ほどほどに豊かな社会』という本に関し、池袋の書店で対談する機会がありました。

 本の対談のときから橘木さんがずっと主張し続けているのは、日本の経済成長は1%から2%でいいという視点です。

 この先いくらがむしゃらに頑張っても、中国のように10%を超える成長率を実現するのはありえない。政府が掲げる経済成長戦略の6%から7%という数値の達成もおそらく無理だろう。しかし、マイナスになってしまうのは困るから1%から2%の成長でいい。これが橘木さんの考え方です。

 1%から2%の成長でいいと考えるということは、「これ以上の豊かさは望めないけれども、極端に貧困になることもなく、ほどほどの生活は維持できる」ということを受け入れなければなりません。こうした考えを肯定的に受け入れるのは、いまの日本人にとって心理的にもっとも難しいことなのではないかとも思います。

 それよりは、実現性の問題は棚上げしてでも、とにかく「まだ日本は成長できるはずだから10%を目指しましょう」と打ち出して、それに向かって努力するほうが受け入れやすいのでしょう。

 あるいは、経済がマイナス成長になり、何もかも失っても幸せになれるという「経済成長不要論」とでも言うような極端な考え方のほうが、人々にとってはむしろ受け入れやすいものなのかもしれません。