日本で屋外でたばこを
吸いにくくなった歴史的背景

 このような官民一体となった国民的なポイ捨て排除キャンペーンが始まったことで、歩きたばこや、外でたばこを吸う人は減少した。では、彼らがどこへ向かったのかといえばもうおわかりだろう。「飲食店」だ。

 このあたりから道や公園でスパスパやっていた日本の愛煙家たちに、「たばこは外ではなく建物の中で」という世にも珍しい喫煙環境が「常識」として刷り込まれていく。

 では同じ時期、海の向こうではどうだったかというと、まったく逆だ。たとえば、1976年9月25日の「読売新聞」にはAPによる外電として「食後の一服はダメ」として以下のような記事がのっている。

『モスクワの一流レストランでは近く「食後の一服」ができなくなる。喫煙者の健康のためというよりは、従業員の健康を配慮しての措置で、どうしても吸いたい向きは休憩室や特設の喫煙所に足を運ばなくてはならない。(中略)また、二流以下のレストラン、軽食堂では以前から喫煙は禁じられている。黒海沿岸の保養地ソチが今年から「禁煙都市第一号」を宣言してから、各地で同じ動きが目立っており、モスクワも早速、これに便乗した形』

 ちなみに、日本に全席禁煙をうたう「アルカディア」という「日本初の禁煙レストラン」ができたのは1984年とされている。

 海外では健康被害の観点から喫煙者を飲食店から追い出したが、日本では火災や怪我の観点から、喫煙者に路上よりも飲食店で座って吸うように促した。それが結果として、世界でも稀にみる「屋内喫煙大国」をつくってしまったのである。

 見方によっては、島国らしく独自の進化を遂げたとも言えるが、いずれにしても、この「常識」もここにきて大きく揺らぎ始めている。都民ファーストで、受動喫煙防止対策に取り組む岡本光樹都議は言う。

「私も地元商工会のみなさんなどとお話をしていますが、条例に対する反対の声はあまり聞きません。飲食店の方のなかには、『これを機に自分の店も禁煙にしたい』というお話も聞きました。きっかけがあれば、禁煙にしたいお店は結構あるように感じますね。最近、飲食店の方からよく聞くのが、働き手の確保が非常に難しくなっているということ。若い人たちがタバコの臭いや受動喫煙の害を嫌がっていますので、なかなかアルバイトが集まらない。そこで必然的に経営者の方たちも禁煙化という判断をされているようです」

 つまり、ここにきて日本でもようやく、1970年代にモスクワの飲食店を席巻した屋内禁煙ムーブメントが起こりつつあるというわけだ。