「布おむつ」は「紙おむつ」に変わるのか?
家に君臨する義母の存在

この「毎日1枚、使ってもらう」という目標設定(あくまで仮の設定ですが)をした場合、まず何を探ればよいでしょうか?

それは、なぜ普段は「布おむつ」を使っているのだろうか?ということです。人の行動には、単に習慣というだけでなく、何らかの心理的な要因が働いている場合が多いのです。インドでは、結婚すると妻は夫の「家」に入ります。まさに、家に「嫁ぐ」という感じです。家では、妻の義母(姑)が絶対的な権力を持っています。夫は、家という場では無力で、母に従います。(インド人男性を見ていると、大の大人になっても、マザコンではないのかと思ってしまうぐらい、母親の言うことを素直に聞きます)

生まれた子どもが男の子の場合、まさに跡取り息子として大切に育てられます。この子どものおむつは、「布おむつ」で育てるべきだという義母の強い思い込みがあります。たしかに、布おむつはふんどし状のものなので、通気性が抜群に良い。(というか、漏れ放題なぐらい隙間だらけなので)おむつかぶれを起こすことがまずありません。

義母は、自分は布おむつで子育てをしたので、紙おむつは大事な子どもがおむつかぶれを起こしてしまうと思っています。そのため、嫁が(現代的な利器として紙おむつにメリットを感じているのですが)紙おむつを使おうとした場合、布おむつの交換をサボる手抜きと感じて許さないのです。そして、紙おむつを使おうとする嫁に「ダメ嫁」のレッテルを貼ってしまうのです。

このように、紙おむつの普及には、義母の存在が大きな障害になっていると言えます。こういう場合、義母の意識を変えることが、妻の「紙おむつ」使用を促進することになります。この課題を解決するために、何を考えればよいでしょうか?

まずは、義母の紙おむつに対するネガティブな気持ちを払拭するためには、どうしたらよいか。どういう紙おむつなら、赤ちゃんがおむつかぶれを起こさないだろうと思うのか、というカテゴリーインサイトを探り、それをとらえた紙おむつ製品を開発することです。次に、ヒューマンインサイトの領域。義母は、大切な赤ちゃんがどう育ってほしいと願っているのか、というそもそものニーズを探ることです。そして、そのニーズと関連して、「紙おむつ」を使うことが赤ちゃんにとってどういいのかという提案を開発することです。

利便性だけでなく、義母が、「赤ちゃんにとって、布おむつより、紙おむつのほうが良い」というベネフィットを感じ、「そういう良さがあるのなら、使っていいよ」と嫁に言ってもらう。そのためには、どうしたら良いかという視点です。

義母が「紙おむつ」に良さを感じ、嫁(ママ)が使うことを容認してくれれば、特別な外出時でなくても、毎日1枚という日常的な使用を実現できないか。1日1枚でも使うことで、紙おむつの良さが実感できれば、1日何枚も使う道筋ができるのではないか。

このような市場拡大の道筋が、成長戦略のシナリオとなっていきます。そして、どういう領域のインサイトを探ればよいかという指針を与えてくれるのです。