ヒット商品の裏には必ず「インサイト」あり。消費者がモノを思わず買いたくなってしまう心のスイッチ――「インサイト」を活用し、新しい市場を切り拓く方法とは。国内での新規事業の創出だけでなく、インドや中国といった海外進出の際に実際に使われた方法もまとめた新刊『戦略インサイト』。本連載ではそのエッセンスや、マーケティングに関する最新トピックを解説していきます。

「インサイト」とは?

インサイトという言葉を、ご存じでしょうか?

欧米のグローバル企業では、1980年代の後半から「インサイト」の考え方を取り入れ、90年代にはマーケティングの根幹をなす概念として、「製品開発」にも取り入れてきました。そして、世界中の市場で大きな成功をおさめてきました。

2005年に、拙著「インサイト」でその考え方と事例を、日本ではじめて体系的に紹介して以降、言葉としてのインサイトはかなり普及し、ビジネスの現場で日常的に使われるようになりました。しかし、その言葉は非常にあいまいに使われているのが実情です。多くの大手企業のコンサルティングをしていると、インサイトという言葉は普及していても、その意味が人によって違っていたり、マーケティングへの活用のとらえ方が部門によって大きく異なってたりします。

消費者インサイトとは、「消費者に潜在しているニーズで、その企業がマーケティング活動に活かすことができるもの」です。マーケティング活動に、「ひらめき」(アイデアへのインスピレーション)を与え、事業に成功をもたらすものです。

インサイトを定義づける3つのポイント

(1)消費者に潜在しているニーズ
消費者のニーズが顕在化している、つまり消費者が声に出して「こういうものが欲しい」と言えるものは、既に満たされている場合がほとんどです。
まだ、消費者自身も気付いていないような未充足ニーズ、それが潜在ニーズです。消費者
の心のホットボタンとも言えるもので、製品などのマーケティングによってそのボタンを
押されると、「そう、そういうものが欲しかったんだ」と購入を喚起されるものです。

(2)マーケティング活動への「ひらめき」を与えるもの
インサイトは、「製品」をはじめとしたマーケティング活動に活かされてはじめて、事業に成功をもたらします。そのため、インサイトは、「調査部門」だけが探索しても、成果を出せません。「製品開発部門」や「広告プロモーション部門」など、さまざまな部門がインサイトを共有し、そこからアイデアを生み出し、実行に移してはじめて成果が出ます。

(3)その企業に最もふさわしい、絞り込まれたもの
マーケティング活動に活かすため、インサイトは、その企業が最もとらえるにふさわしく、かつ実現可能なものに、絞り込み、特定する必要があります。その企業にふさわしいインサイトとは、その企業のビジョンに合っていて、企業の資産や強みを最大限活かせるものです。

以上からもわかるように、インサイトはけっして、単なる「消費者理解」や「消費者における発見」ではありません。定量調査(アンケート調査などに代表される数字で結果が表される調査)の結果は、調査結果であってインサイトではありません。

消費者のトレンドスタディは、消費者の動向や意識変化を知ることで、インサイトを探るベースにはなっても、それがそのままインサイトになるわけではありません。また、さまざまな調査手法が開発されていますが、そこから発見された消費者の深層心理がいくら「興味深い(おもしろい)発見」であったとしても、マーケティング活動に活かせるものでなければ、インサイトではないのです。