斉藤さんは、性教育の必要性を肯定する一方で、それが性犯罪の完全な抑止につながるかについては懐疑的だ。一方で、次のように指摘する。

「加害者からのヒアリングの結果、唯一優位性が認められたのは『学生時代にいじめられた経験があること』でした。家庭内での(性)虐待経験がある人が多いのではといった予想をしていたので、これは意外な結果でした」

 もちろん、いじめられた経験のある人のすべてが性犯罪に走るわけではない。あくまでも、斉藤さんの実証研究では、家庭的要因よりも、「学生時代のいじめ」という心理社会的な要因の方が、影響が大きい可能性があるということだ。

「起きている時間、家よりも学校で多くの時間を過ごします。人間関係を学ぶのも学校であることが多い。いじめを受けた側は、心理的に逃げられない状況の中で自己肯定感や自尊心を削られていきます。それを成人してからもずっと恨みに思っている人は多い。恨みの感情への防衛機制として自分より弱い人を虐げる方向に向かう場合がある」

 斉藤さんが今後、力を入れていきたいと思っているのは、学校性教育との連携。いじめが起こったとき、なるべく早期に発見すること、また被害者をきちんとケアすることに、「加害者にしないための教育」のヒントがあるのではないかと考えているという。

「いじめが起こらないのが一番ですが、起こってしまったときになるべく早く大人が適切に介入すること。同級生でも上級生でも誰でもいいので助けてくれる人がいること。被害経験がキャッチされ、適切にケアされること。そういったことによって、負の連鎖が断ち切れる可能性はあるのではと考えています」

 たとえ性犯罪との因果関係がないにしても、いじめの被害者が迅速にケアされることに異論を唱える人はいないだろう。いじめを受けていることを親に打ち明けない子どもも多い。親だけではなく、いろいろな立場にいる大人が、子どもをつかず離れずの立場で見守ることが大切なのかもしれない。