島根県海士町
島前高校のある島根県海士町。ほんの数年前まで、地元の子どもたちですら島外の高校への進学を考えるほどの状況に陥っていたという

「以前は、島前地域の出身にもかかわらず、島前高校を避けて島外の高校に進学する子もいるほどの状況で、生徒の減少は深刻化していました。ただ、もし高校が島からなくなれば、進学を希望する全ての子どもたちは15歳で島を出て、島外の高校に行かなければならなくなる。そんな多感な時期に離れれば、島への愛着や『いつかこの地域に戻りたい』という気持ちは薄れます。

 将来のUターン率が低下すれば、人口減はますます深刻化するだけ。高校を失う文化的・経済的損失は計り知れない。そこで、海士町が主体になって、島前高校改革を始めたのです」

 こう語るのは、元リクルートキャリア社長で、現在は学校を核とした地域創生を行う「地域・教育魅力化プラットフォーム」の代表理事を務める水谷智之さん。水谷さんは、2016年からは海士町の魅力化プロデューサーも務めている。

 島前高校の改革の中心人物となったのは、現在、島根県教育魅力化特命官を務め、水谷さんと一緒に地域・教育魅力化プラットフォームの共同代表でもある岩本悠さんだ。岩本さんは2006年から海士町に移り住み、その後、島前高校ではコーディネーターとして高校改革を行ってきた。

 ここ数年、「(島外出身者を募集する)推薦入試の倍率は1.5~2倍程度」(岩本さん)と、生徒数が激減していた高校としてはあり得ないほどの倍率になり、島前高校の人気は高まるばかりだが、その背景には岩本さんたちが行ってきた様々な「魅力的な施策」があった。

生徒が集まる3つの魅力
離島なのに専用の“公立の塾”まで完備

 離島の高校が魅力的に映っても、大学進学を見据えると、なかなか踏ん切りがつかない生徒やその家族は少なくないだろう。実際、海士町を含む島前地域(そのほか西ノ島町、知夫村を含む)には高校が1つしかないため、高校内での学力差が大きくなり、高校の教員数が減るなかで、多岐にわたる進路希望や学習指導を行うのは実質的に難しい状況にあった。