「日本は世界一」と思いたいけれど…
誰もが生きづらさを抱える現代

 コンプレックスのある人は攻撃的だ。自分に自信がない人は他者をボロカスに叩けば、多少なりとも自信を取り戻す。上から目線で人をバカにすれば「俺の方が賢い」と優越感に浸れることができるからだ。

 そして、コンプレックスは、プロを目指して自分を信じながらも祖父母からダメ出しをされた本田選手のように、「こうありたい」という理想の自分像と現実の自分のギャップが大きければ大きいほど、強くなる。

 このコンプレックスが極限まで膨れ上がった時代が、実は戦前戦中の日本だった。

「世界一の皇国」をうたいながらも、時を経るごとに西洋列強に追いつめられていく。「八紘一宇」「大東亜共栄圏」という、うっとりとするような理想を掲げるも、なかなかそれを実現できないというジレンマがあったのだ。

 こういうコンプレックスを抱えた時代に、棍棒で「非国民」を追い回す「他者攻撃」が隆盛を極めたというのは非常に興味深い。現代日本の姿と、モロかぶりするからだ。

 2013年、国際比較調査グループISSPが、31の国・地域を対象にして「国への帰属意識」を調べた。そのなかで日本は、「一般的に言って他の多くの国々よりこの国は良い国だ」と回答した人の数でダントツ1位、「他のどんな国の国民であるより、この国の国民でいたい」というのもフィリピン、南アフリカに次ぐ第3位だった。「日本人は謙虚」「日本人は自信がない」というのはあくまで「個人」の話であって、「日本」という「集団」の話になった途端、戦前と変わらぬ高い自尊心をみせる。それが我々日本人なのだ。

 もちろん、国を誇るのは悪いことではない。自分の国にどんなセルフイメージを抱こうとも自由だ。だが、現実の姿とあまりにギャップがないか。

 人口は急速に減少し、世界幸福度ランキングも年々下がって今や先進国中で最下位。組織ではパワハラやセクハラが後を絶たず、若者が希望を抱けない。こういう話を必死で否定する人も多いが、「こんなに生きづらい社会はない」と感じる人はそれ以上に多い。

 2016年にNHKが全国18歳以上の男女、2811人を対象におこなった意識調査のなかの「心のゆとりを持ちにくい社会だ」(62%)、「自分のことばかり考えている人が多い」(71%)、「いらいらすることが多い」(66%)という結果が、それを雄弁に語っている。