ドンキホーテホールディングスの業績が絶好調だ。今年6月期で29期連続の増収増益を見込む。2020年6月期に売上高1兆円を目標とするが、前倒しの可能性が高まってきた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)
今年5月上旬、車いすに乗った老齢の紳士が、横浜市にある「MEGAドン・キホーテUNY大口店」を訪れた。その人物とは、イトーヨーカ堂創業者でセブン&アイ・ホールディングス(HD)名誉会長の伊藤雅俊氏(94歳)である。
店内を視察する伊藤名誉会長のそばには、同氏の次男で、セブン&アイHDの次期社長候補の一人である伊藤順朗取締役常務執行役員の姿もあった。
そもそもイトーヨーカ堂とドンキホーテHDは経営に対する考え方が対極的である。
伊藤名誉会長は、経営コンサルタントの故渥美俊一氏を師と仰ぎ、渥美氏が米国から持ち込んだ「チェーンストア理論」を伝えるために立ち上げた研究団体「ペガサスクラブ」の主要メンバーとして、チェーンストア理論に基づく店舗経営で規模を拡大してきた。
片や、ドンキ創業者の安田隆夫創業会長兼最高顧問は、チェーンストア理論とは正反対の発想で、各店への徹底した権限委譲による個店経営を推し進めてきた。ちなみに、安田・渥美両氏は、渥美氏が書いたドンキ批判の記事をめぐり、名誉棄損訴訟で争った“因縁の仲”でもある(2006年にドンキが勝訴)。
にもかかわらず、伊藤名誉会長がわざわざドンキの店頭まで足を運んだ理由の一つは、不振のGMS(総合スーパー)業態であるユニーの店舗を活性化させたドンキへの関心だった。
ドンキHDとユニー・ファミリーマートHDは、17年8月に資本・業務提携を発表。ユニー・ファミマHD傘下のユニーに対して、ドンキHDは40%を出資し、ユニー6店舗を今年3月に“ドンキ化”。ユニーとドンキの二つの看板を掲げるダブルネーム店としてユニー再生に乗り出した。
その成果は驚くような数字に表れている。GMSの課題である非食品の売り上げが向上したことなどで、3~4月の2カ月間の6店舗合計の売上高、客数、粗利はいずれも約2倍に上昇した(図(1))。