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企業がイノベーションで成功するためには
「5つの準備」が必要だ

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第82回】 2018年7月20日
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権限:
権限は、組織や制度と深いかかわりを持っており、既存の組織には社内規定などの制度によって定められた権限が与えられている。しかし、イノベーションの推進においては従来の業務分掌や権限規定が、意思決定のスピードや活動の自由を阻害することがある。予算権限、稟議・承認プロセス、外部との連携における自由度、既存組織を巻き込む権限など、変革の足かせを取り払う取り組みが必要となろう。これについても制度と同様に、特例的な権限付与や部分的な規定の緩和を可能とするような措置を講じ、その範囲を段階的に広げていくことが求められる。特に投資や予算に関する権限は重要となる(図5)。従来の予算権限のルールに則っていてはイノベーションに重要な「最初のひと転がり」を回すことが困難となったり、柔軟な軌道修正が行えなかったりする場合がある。一定の予算枠を設定し、その範囲であれば自由に裁量できる権限を推進者に与えておくことも有効な方法となる。

人材:
最も重要かつ難題となるのが人材に関する変革である。CDO(Chief Digital Officer)の登用、社内のIT部門および事業部門におけるイノベーション人材の育成、中途採用、配置転換などが考えられるが、人材育成には時間がかかり、外部からの採用も困難といえる。また、優秀な人材を社内外から集めたとしても、ここで述べた意識、制度、権限などの条件が整っていなければ成功はおぼつかない。具体的な方策としては、中長期的な視点での人材の確保・育成のための計画とそれを実現するプログラムを策定し、実行していくことが求められる(図6)

 昨今、デジタルイノベーションに対するIT部門のあり方についての議論が盛んであり、「モード1とモード2」や「守りのIT部門と攻めのIT部門」といった分類を耳にすることがあるだろう。しかし、この議論はIT部門に限ったものではなく、会社全体にも当てはまるものである。つまり企業が、従来の戦略と既存事業の延長上の成長を目指すのか、変革を重視した組織に生まれ変わるのかが問われている。後者を指向するのであれば、まずは自社のイノベーションへの環境整備の成熟度を自己評価し、ここで述べたか5つの分野の変革を着実に進めていくことが求められる。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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