「世界経済の政治的トリレンマ」とはなにか?

 では、世界の政治経済の潮流が大きく変わろうとするとき、私たちはどのような投資方針を持てば良いのでしょうか?

 それにはまず、潮流の方向を知る必要がありますが、それは次の考え方を援用することで明らかとなります。

 トルコ出身の政治経済学者ダニ・ロドリックが唱えた考え方に「世界経済の政治的トリレンマ」と呼ばれるものがあります。

 これは「グローバル化」「国家主権」「民主主義」の3つを同時に追求することは不可能なので、このうちの2つを選択せざるを得ないという考え方です。

 ここでいう「グローバル化」とは、経済の生産性を限りなく追求しようとする思想です。次の「国家主権」とは、貿易や通貨に関わる国家の主権を確立しようとする思想です。そして最後の「民主主義」は、国内の幅広い意見を政治に反映させようとする思想です。

 ロドリックは、これら三つ巴の思想の中でどの2つを選択するかによって、世界の政治経済の潮流が決まると唱えたのです。

 この場合の組み合わせは、次の3択になります。

(1)国家主権+グローバル化
民意に関係なく、国際分業体制を強化するための規制緩和を軸とした市場重視の政策になります。第一次世界大戦後から世界恐慌までの動きや、ポスト冷戦時代に推し進められた金融資本主義の世界がこれに当てはまります。

(2)民主主義+国家主権
グローバル化を制限して、それぞれの国が民意を反映させた経済運営を行うことが主眼となります。1929年の世界恐慌以降の世界や、現在のトランプ政権下のアメリカがこれに当てはまります。

(3)民主主義+グローバル化
グローバル化を導入しつつも、市場・通貨の統合など国際分業体制の枠組みを双方の民意を反映しながら協調的につくっていく形が軸となります。