今、再び注目を集める企業に何が起きているのか

 もちろん、ITの専門家や書き手の間では、優れた会社であることはよく知られていた。また、今マイクロソフトでとんでもない変革が起きていることについても注目されている。

 会社の記者会見に行けば、多くの記者が押し寄せるし、数万円もの参加費を払って数千人もの人々が押し寄せるテックイベントもある。また、最近では20代の技術系の学生、若い会社員を中心に就職人気も高まっている。

 だが、一般の人にはそうしたイメージは正直ない。ここまで乖離があるのは、マイクロソフトという会社が一般の人向けに語られることがあまりない、ということに起因しているのではないかと気づいた。

 もちろん雑誌やネットでマイクロソフトの情報は溢れているが、ITの専門家やエンジニアによって書かれたものは、書くことを仕事にしている私にも、実のところ、専門用語が多くてどうにもわかりにくいのだ。そして、マイクロソフトもあまり宣伝しようとしないし、宣伝も得意ではない会社なのだと思う。

 正直に申し上げておくが、私はITの専門家ではない。もっといえば、ITに詳しいわけでも、マイクロソフトの技術に詳しいわけでもない。だが、むしろ専門家ではない目線で、書き方で、マイクロソフトという会社の今を、マイクロソフトの変革を、未来に何をしようとしているのかを、書くことはできないかと考えた。

 こんな私の思いに対して、日本マイクロソフトから取材への全面協力をいただくことができ、アメリカ本社にも取材に行くことができた。

 ありがたいことに、多くの主要幹部の話を聞くことができた。例えば、アメリカ本社の経営チームの一員であり、サティア・ナデラCEOの側近の一人、ジャン=フィリップ・クルトワ氏や、今大きな話題になっている「HoloLens/ホロレンズ」の開発者アレックス・キップマン氏など、IT関係者の垂涎の的ともいえる人たちに取材をすることができたのである。

 今、多くの企業が会社の変革に挑んでいる。そしてITはもはや欠かすことができないものになっている。マイクロソフトの変革についてお届けすることは、今の日本企業や日本のビジネスパーソンにとって大いに役立つはずである。

 世界最大のソフトウェア会社はいかにして変わったか。どんな革新的な未来をつくろうとしているのか。これから、どんなことが起こっていくのか。ご紹介していこう。

(この原稿は書籍『マイクロソフト 再始動する最強企業』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)