国土交通省は今春から新しいマンション管理制度の作成に着手しているが、導入が検討されているある新制度が議論を呼んでいる。
新制度とは、マンション管理組合の運営を区分所有者以外の第三者へ委譲可能にする制度。つまり管理組合業務そのものの外注化だ。
新制度案が浮上した背景には、管理組合はマンションの意思決定機関だが、理事のなり手がおらず、機能不全に陥っているマンションが続出していることがある。
特に築年数が古く高齢者だらけのマンション、所有者が居住していない投資用ワンルームマンションやリゾートマンションなどにその傾向が目立つ。マンション管理のコンサルティングを手がける、シーアイピーの須藤桂一社長は「年に一度も理事会が開催されないマンションは珍しくない。程度の差はあるが日本のマンションの1~2割、50万~100万戸が該当する」と指摘する。
ただ、全国マンション管理組合連合会など複数の団体は、外注化ニーズには理解を示しつつも、「例外的な措置に」と意見書を提出し、幅広く第三者委譲を導入したい国交省をけん制した。
安易な管理組合の外注化が住民の当事者意識を希薄化させる懸念もさることながら、利益相反の問題がクリアにならないからだ。
例えば受託者は管理や修繕の業者を選ぶ権利があるが、最適な業者ではなく、お抱えの業者を選ぶ可能性がある。理屈上は報酬もお手盛りで決定できる。委託者となるマンションのことを最も知っているのは管理会社だが、同じ管理会社や関連会社が受託すれば、利益相反リスクは計り知れない。
公平性を考慮してコンサルタントや建築士、マンション管理士が受託しても、独立性が保証されるものではない。既に第三者を装った悪徳な管理コンサルタントが各地で問題になっている。