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国際線予約システムを欧州系のクラウドに移行
ITに競争優位性を求めず、「自前」から「利用」へ:ANA

2012年5月1日
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――IT投資の増加についてはどのようにお考えですか?

 これは大きな課題です。IT投資の増加原因は、システムの開発案件が増えていることにあります。しかし、システムは作ることを決めた後で削るのは非常に難しいので、「投資対効果はあるのか?」「本当にシステム化が必要なのか?」「もっと違うやり方はないのか?」などを早い段階で検討して絞り込む必要があります。そこを頑張れば2割くらいは減らせるのではないかと思います。お客様向けのシステムと社内向けシステムのサービスレベルは、必ずしも同じでなくてもいいと思います。

――幸重さんはITといっても基幹システムではなく、国内の航空会社共同出資による国内線チケット予約サイト「国内線ドットコム」や、ANAの国内線チケット予約サイト「ANA SKY WEB」など、インターネットのマーケティング分野の経験が豊富です。

 ちょうど航空業界の販売チャネルが大変化を遂げる時期を見ることができました。かつては国内線チケットの8割が旅行代理店経由だったのが、今年1月現在では約7割がパソコンや携帯電話などのインターネット経由になっています。変化はコールセンターの電話件数にも顕著に現れています。2000年には年間2000万本の予約電話を受けていたのが、5、6年で半分の1000万本に、昨年2011年には600万本にまで減っています。ここまでダイナミックに、インターネットのもたらす変化を享受した業界はないでしょう。

 国際線でも、今はネットによる予約は約2割ですが、年々伸びています。特に近距離の国際線などは、国内線の感覚に近くなっているのか、ネット予約の割合が増えつつあります。

――今後はどう変わっていくと見ていますか?

 今は、もう一度大変革が起こるターニングポイントだと思います。特にスマートフォンの普及が大きい。今まではパソコンと携帯電話の役割は補完関係にあり、事前予約はパソコンで、当日の予約変更は携帯電話で、と、時間軸による使い分けが中心でした。それがスマートフォンだと一つになります。

 単にチケットを予約したり予約内容を変更したりというだけでなく、当日の空港でのサービス、到着先でのサポートなどの一貫したサービスを直接行うことができる。位置情報などを活用すれば、海外での空港での乗り継ぎ情報もお知らせすることができます。技術的にさまざまな可能性が広がり、航空会社としてどんなサービスを提供できるかが問われます。大変ではありますが、大きなビジネスチャンスです。

――こうしたビジネス環境の変化を受けて、情報システム部門に求められるものが変わってきています。人材育成では何を意識していますか?

 IT部門の外を見る機会をどんどん増やしています。ユーザー部門の経験をさせたり、ANA以外の他社で経験をさせたりしています。「航空会社は特別だ」という先入観を取り去って、日本のほかの成長企業から学ぶことが必要です。かつては欧米の企業から学ぶべきところも多かったですが、日本企業から今学ぶべきこともたくさんあります。たとえばANAでは、NTTコミュニケーションズと人材交流を行っており、若手のIT部門社員を受け入れていただいています。現在ちょうど一期目が終わったところですが、戻ってきた社員は、受注業務の厳しさを学んだり、最新技術動向に触れたりして、大きく成長して戻ってきました。今後も継続し、良い相手があれば広げたいですね。

(文/ライター 大井明子)
 

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