8月から70歳以上の高齢者の「高額療養費」の限度額が再び変更され、2017年8月から段階的に見直されてきた制度改正の総仕上げが行われた。
一部に、「目を離したすきに、高齢者負担は増やされる」「高齢者の医療費、大幅引き上げ」といった報道も目にするが、実際はどうなのか。
不安を煽る報道には距離をおきつつ、見直しの経緯や制度改正の背景にあるものを踏まえながら、70歳以上の高額療養費の変更点を見ていきたい。
2025~2040年にかけて
医療を必要とする人が急増
高額療養費は、医療費の支払いが家計に過度な負担を与えないように配慮した健康保険の制度で、1ヵ月に患者が支払う医療費の自己負担分に上限を設けたものだ。
この制度のおかげで、手術や入院をしたり、治療が長引いたりして、医療費そのものが高額になっても、患者が支払う自己負担分は低く抑えられるようになっている。
たとえば、70歳未満で一般的な所得(年収約370万~約770万円まで)の人は、医療費が100万円かかっても、この制度によって自己負担額は約9万円で済む。とてもありがたい制度だが、厳しい保険財政の健全化を目指して、70歳以上の人の負担も見直されることになった。
国民医療費が年々増加しているのは、画期的な新薬や医療機器の開発などによる医療の高度化が最大の要因だが、人口構造の変化も無関係ではない。
2018年8月1日現在の日本の総人口(推計値)は、1億2649万人。そのうち65歳以上の高齢者は3551万人で、高齢化率は過去最高を更新して28.1%となっている。人口が年々減少するなか、高齢者数だけは増加しており、日本は世界に例を見ないスピードで高齢化が進行している。