「あなたが日本を救う」
理想論と現実の激しい落差

 現代の若者は目立つことをためらい、何かにつけて空気を敏感に読み取って行動しようとする。自己肯定感が低く、自分への物足りなさと自己承認欲求との折り合い地点をNPOに求めているのだ。

「不登校支援のNPOにインターンで入ったんですが、交通費も出ない状況の中、週4日勤務でした。タダ働きだったし、今思えば最悪ですが、当時はやりがいを感じていました。『あなたの働きが日本を救うのよ』といった女性代表の言葉にだまされていたんでしょうね…」(都内出版社勤務の女性)

 日本に約5万あるNPO法人だが、職員の多くは生活に窮している。もちろん、生活水準を満たすNPOもあり、たとえば世界の子どもの人身売買問題に取り組む「認定NPO法人かものはしプロジェクト」は、職員の平均年収を450万円と公表している。しかし、こうした一部のホワイトNPOが存在する一方で、業界の平均年収は300万円には程遠いといわれている。

「28歳での結婚を機にNPOを辞めました。当時は月額で18万円ほど。『あなたがいなければ、この活動は継続できない』という言葉を信じて仕事をしていたんですが、さすがに生活が厳しくて営業職に転職しました」(民間学童保育NPOに勤務していた男性)

 だが、転職先でうまくいかずにNPOへ出戻る人もいる。

「転職先で、利益や結果ばかりを求める民間会社に嫌気がさしました。NPOで働く方が怒られることが少ないし、自分を求めてくれるので居心地がいいんですよね。もちろん、金銭や労働時間的な問題はありますけど…」(教育系NPOに勤務する男性)

 そもそも、NPOは経営資源が乏しいという事情がある。情熱だけで活動し、日々の活動に追われる中、資金・人材不足に陥ることはよくある話だ。気持ちや言葉で人をつなぎとめることが、結果的に新興宗教に近い空気感を生み出し、やりがい詐取が生まれるキッカケとなるのだ。