社内の「1割勢力」が
残り9割の社員を動かす

 専務の山本昌治は、「社内の1割の人間が変われば、やがて全員が変わる」と考え、次のように話しています。

「人間は十人十色で、全員、性格は違いますが、『会社』という集合体の中にいる以上は、同じ方向に向かって足並みを揃えなければなりません。
 そのためには、社員の意識を変える必要がある。
 とはいえ、全社員の意識をいっぺんに変えることは難しいので、私は『1割の社員が変われば、結果的に全社員が変わる』と考えています。
 私がまだ若かったとき、ある先輩からニホンザルのエピソードを聞かされたことがありました。
 動物園に、100匹のニホンザルがいたとします。サル山の中に、みかんを投げ込むと、ニホンザルは、皮のまま、みかんを食べます。
ところが、エサを与える人間が、『みかんの皮をいて食べている』と、その様子を見たニホンザルの1匹が『剥いて食べる』ことを覚えます。

 すると今度は、ニホンザルの仲間が『あいつは皮を剥いているから、自分も剥いてみよう』と考え、皮を剥くようになる。
 全体の1割に当たる『10匹』が皮を剥くようになるまでは、時間がかかります。
 けれど、10匹までいけば、そこからは早い。残り90匹のニホンザルも、『皮を剥いてみかんを食べる』ようになると聞いたことがあります。
 このエピソードが事実なのかはわかりません。
 けれど、会社の旗振り役となる『1割勢力』が残り9割の社員を動かす、という考え方は、正しいと思います。
 ヒルトップが成長できたのは、副社長が元ヤンキー・暴走族だった谷口、静本、林と本気で向き合い、時間をかけて、彼らを『1割勢力』として育てることができたからです。
『理解と寛容を以て人を育てる』には、時間がかかります。
『1割勢力』ができるまで我慢する忍耐力や胆力が経営者には必要ではないでしょうか」(山本昌治)

 今回、年間2000人の見学者が訪れる、鉄工所なのに鉄工所らしくない「HILLTOP」の本社屋や工場、社内の雰囲気を初めて公開しました。ピンクの本社屋、オレンジのエレベータ、カフェテリア風の社員食堂など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事をご覧いただければと思います。