ロシアは「ロ中蜜月時代」を見せつけることにより、欧米に対しては、中国との連携の深まりが嫌なら「制裁を緩和しろ」と、日本に対しては「もっと経済協力をしろ」と呼びかけているようだ。

 そういう時に米国の同盟国日本が中ロの分断を図ることができるのだろうか。

 経済協力を進め、G7の中で突出した形でロシアと連携を強めるような行動をするのはロシアの思うつぼなのではないか。

逆転した対ロ認識と対中認識
今こそ日中関係強化が重要

 先日、英国の有識者と話をしていて、ロシアと中国に対する日本の認識が話題となった。

 冷戦が終わり、ロシアの脅威が弱まった中でも、日本の反ロ感情は強かった。ソ連が日ソ中立条約を一方的に破棄し、戦争終了後、北方4島を不法に占拠していることだけでなく、ソ連が約60万人といわれる日本人捕虜をシベリアで長期に抑留し続け、強制労働に使役し、5万人を超える人々が亡くなったことに対する憤りは強かった。

 一方、中国の行動は、ロシアとは対照的だった。中国に日本が被害を与えたわけだが、戦後の日本軍人の処遇について、中国は国際法に従った行動をとった。日本兵は多くが中国の管理所で1年程度の時を過ごし、日本への帰還が許された。1972年に国交が正常化された後、「日中友好」が日中関係の基調となった。

 それが今日では、反中・嫌中認識が強まり、反ロ感情は緩和され、認識が逆転したような様相を示している。

 安倍首相は就任以来、22回もプーチン大統領と首脳会談を繰り返しているが、習近平国家主席とはわずか7回にすぎない。

 中国は日本にとって最大の貿易パートナーであり、訪日外国人のトップを占めるのは中国人だ。もちろん相手がある話だから、相手に首脳会談開催の意思がなければ会談は成立しない。

 また首脳会談を頻繁に行うことが関係の重要性の尺度でもない。問題が多いから頻繁に首脳会談を繰り返すということもあるだろう。しかし、もしそうだとすれば、結果が求められる。

 幸いにしてようやく日中関係の改善の兆しが出てきた。ロシアで日中首脳会談も実現し、10月の安倍首相訪中の道筋がついたようだ。

 これも米中関係悪化の結果、中国が日本との関係改善にメリットを感じたからなのであろうが、日本はこの機会を活用し、平和友好条約締結40周年に向け、しっかりとした中長期的な日中関係の設計をしてほしいと思う。

 その際には日ロ関係への外交のプライオリティーも見直し、新たな外交戦略を構築していく必要があると思う。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)